Q : 社会人になって半年が経ち、ようやく仕事にも慣れてきました。でも最近ストレスのせいか生理が不安定です。(23歳女性)
A : 23歳、新入職のフレッシュなお年ですね。ストレスと言えば5月病、最近では研修期間1か月分遅れて「6月病」もあるようですが、今回は生理=月経が話題です。
月経は女性にとって健康的な日常生活を送るために必要な生理現象で、腹痛やむくみ、頭痛などで悩まされることが多いも、一方で女性の健康のバロメーターでもあります。通常は約1カ月の間隔で起こり、この周期の異常を月経不順と言い、月経に伴う不快症状は月経前症候群や月経困難症と呼ばれます。
月経周期の長さによって頻発月経、稀発月経、無月経に分けられ、最長月経周期と最短月経周期との差が7日以上のものは不整周期月経と呼ばれます。
重症な場合は別ですが、機能的な月経不順のほとんどは経過観察のみで十分とされます。治療の対象となるのは次のような場合です。全身状態の悪化や社会生活に支障をきたしている場合、挙児希望にもかかわらず1年以上妊娠に至らない場合、卵巣機能不全が疑われる場合や肥満・るい痩が認められる場合などは産婦人科、内分泌代謝内科、精神科など各専門医に紹介も念頭に次のように診療に当たります。
まず妊娠を除外し、次に子宮頸がん・体がんなどの婦人科器質的疾患を除外し、基礎体温表を参考にしながら機能性の月経不順を診てゆきます。思春期にみられる月経不順では、神経とホルモンを調節する視床下部の未熟性のための無排卵性周期症が多く、初経の後、性成熟期まで続く月経不順は、多嚢胞性卵巣症候群によるものが多いとされます。性成熟期になってから出現する月経不順は、体重減少や精神的・肉体的ストレスから来る視床下部の機能異常によるものが多いようです。また、45歳以上にみられる更年期月経不順では、卵巣機能低下が原因とされます。
頻度の高さでは思春期月経不順、更年期月経不順、多嚢胞性卵巣症候群、視床下部性(運動性、心因性、体重減少性)、黄体機能不全、高プロラクチン血症などがありますが、重症度では神経性食欲不振症も無視できません。また、稀ではありますが、甲状腺機能異常、クッシング症候群、分娩後汎下垂体機能低下症(シーハン症候群)、アンドロゲン産生性腫瘍(卵巣、副腎)、エストロゲン産生性腫瘍(卵巣、副腎)なども挙がります。
繰り返しになりますが、月経周期の異常と一口に言っても妊娠に伴う性器出血や子宮筋腫など器質的疾患による不正性器出血を月経不順として捉える方も多い様です。
相談者様も、定期的な妊娠チェックや婦人科検診などを心がけ、お悩みがあればご同僚や上司様、ご家族に相談されるのもよいかと存じます。また、適正体重と適度な運動、夜は電気を消して良質な睡眠をとることで月経症状や月経不順は軽くなるとも言われますので参考までに。
なお、内科的なチェックや総合病院専門科へのご紹介は当院外来で行っておりますのでご相談ください。(金崇豪)
参考文献:
佐藤幸保監修.”月経不順”.今日の臨床サポート.
https://clinicalsup.jp/jpoc/searchDetails.aspx?SearchTerm=1704&SearchTerm=すべて&SearchText=月経不順.(参照2018-7-1)
宮内文久ら.”夜間勤務時のホルモン動態と月経異常”.産業医学.1992,34,p.545-550
佐久間夕美子.”若年女性の月経前期および月経期症状に影響を及ぼす要因”.日本看護研究が会雑誌.2008,31,2,p.25-36