2019年04月30日

主人のいびきが、最近ひどくなりました

Q : 主人のいびきが、最近ひどくなりました。以前はお酒を飲んだ時くらいだったので心配です。薬で治療できますか。(37歳女性)

A:いびきがひどくて、別の部屋で寝てもらっていても母子そろって熟睡できない!でも、本人はぐっすり気づいていないのではないか。。。そんな心配・お悩みありますよね?
いびきには大きく分けて単純性いびきと睡眠時無呼吸症候群を伴ういびきの2種類があります。生活習慣病のリスクにもなるため、生活の中での対策はもちろん、必要な時には検査と治療をおすすめします。
いびきは寝ているときに空気の通り道が狭くなって起こります。慢性的なアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、扁桃炎、鼻の真ん中の骨が曲がっている鼻中隔彎曲症、口蓋垂(のどちんこ)が大きい場合などがあります。放置しておくと、いびきが悪化すると共に睡眠時無呼吸症候群の原因となります。
医学上は10秒以上の気流停止を無呼吸といい、一晩(7時間)の睡眠中に30回以上無呼吸が認められる場合、あるいは1時間に5回以上無呼吸がある場合に睡眠時無呼吸症候群としています。睡眠中の出来事であるため自分で気がつくことは稀で、潜在患者数は300万人もいると推計されています。21世紀の国民病といわれることもあります。治療法が確立されているため、適切に検査・治療を行えば決して恐い病気ではありませんが、放っておくと高血圧、糖尿病などの生活習慣病や心臓・脳血管障害などにつながるリスクがあります。

いきなり病院はハードルが高い!そんな場合はまず適正な体重を維持する、枕を変える、マウスピースを使うなどの対応が良いでしょう。本人にいびきの自覚がなくても、眠りの質は低下するため、朝の頭痛やだるさ、日中の眠気、運転中の眠気、朝の血圧が高く降圧剤が効きにくいなどの症状がみられる場合もあります。ビデオを撮影して症状(被害?)の深刻さを自覚してもらうという荒療治をされる猛者も。
ある報告によると、男性・加齢・首周りの肉付きが睡眠時無呼吸の程度の増悪因子といわれていますが、ご主人の体形でお気づきのところありませんか?
治療は歯科ではマウスピース、医科では減量のサポートと生活習慣病などの併存疾患の治療、そしてマスクによる持続陽圧呼吸療法CPAPや、扁桃腫大が原因の場合の外科的治療、など色々なアプローチがあります。

いびきに始まる睡眠時無呼吸症候群はとても身近な病気です。当院では歯科・内科外来で専門科と連携しながら診療にあたっております。ぜひ気軽にご相談ください。(金 崇豪)

 

◇睡眠時無呼吸症候群の治療 監修医院 にしかわ耳鼻咽喉科
https: www.nisikawa-mimi.com/sas/noisy/
◇一般社団法人 日本呼吸器学会ホームページ 呼吸器Q&A 夜、いびきをかくといわれました
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=61
◇Robert J O Davies et al. The epidemiology of sleeping apnoea. Thorax 1996;51:(Suppl 2):S65-S70 ◇Chapter 2 – Epidemiology of insufficient sleep and poor sleep quality. Sleep and Health
2019, Pages 11-20

1年で52キロから47キロに痩せてしまいました

Q : よく食べる方ですが、1年で52キロから47キロに痩せてしまい心配です。どんなことに気を付けたらよいでしょうか?健康診断は特に問題ありません。(47歳女性)

A : 健康に気を使っているのにやせてしまう!気がかりな中、ご質問ありがとうございます。「痩せ」いわゆる体重減少は、6か月で5%以上の減少があると臨床的にも問題とされます。よくある病気では甲状腺機能亢進症、糖尿病、うつ病、認知症や時に悪性腫瘍も鑑別に挙げることがあり時に段階的な検査と合わせて慎重な経過観察が必要です。47歳とお若く、52㎏からの体重減少は1年で5キロ。12か月でおよそ10%。問題となるレベルかどうかが難しいところです。もともと「肥満」ではなかった方の「痩せ」を外来で拝見した場合には発熱やエネルギーの消費量が増大するような疾患がなければ、次にエネルギー摂取不足を来す疾患を考慮して検査を進めてゆきます。大まかに、内分泌疾患、消化器疾患、感染症、心不全、腎不全、神経疾患、非感染性炎症疾患、悪性腫瘍、精神科疾患、アルコール、麻薬や覚醒剤などの薬剤性と幅広い鑑別をあげながら、各専門科と連携し、1か月から6か月程度の間隔で時間をかけて診療させていただくと思います。

しかしながらちょっと気になるのがご質問者様の性別とご年齢です。47歳、女性。もしかして更年期? ホルモンバランスが乱れると自律神経のバランスも乱れて、ただでさえ心身の状態は不安定になりがちです。加えて、家庭や人間関係、老後への不安、親の介護、子どもの教育、仕事など健康面や将来に対しての心配ごとが増えていく。更年期のお年頃は環境的な問題からもストレスを抱えやすい時期です。

一般的には、若い頃は多かった筋肉量も年齢とともに減ってしまい、若い頃と同じような食事を続けてしまい太りやすくなるというわけです。また、女性ホルモン(エストロゲン)も体重の増加に関係しております。排卵や月経に適した身体づくりのほか、脂肪の代謝を促すエストロゲンが、閉経を迎えて分泌量が減り、内臓脂肪がたまりやすくなります。

逆に!質問者様のように更年期になると、痩せてしまう人もいます。その理由は、胃の粘膜や腸の蠕動運動など消化器のはたらきが落ちて、食欲不振になり食事摂取量が低下していることも考えられます。併せて、自律神経のはたらきが乱れてしまうことが影響しているかもしれません。

ところで、肥満と痩せのどちらが健康によいのでしょうか?一般に中年以降の肥満は男女ともに慢性疾患のリスクを上げ、健康寿命の短縮につながることが分かっています。中年以降には肥満を避けて、筋力を保ちながら若いころの体重を維持することが賢明です。そこで健康的な痩せ方のポイントとなる、運動と食生活についてご紹介いたしましょう。

まずは、定期的な運動から!少し息が上がる程度の有酸素運動がお勧めです。ウォーキングでは腕を振りながら歩くと全身運動になり、筋肉にほどよい刺激を与えながら、全身を引き締めることができます。寒い季節や屋外の運動が不安な方は、転倒に気を付けながら踏み台昇降など自宅で行うこともできます。1週に150分程度の運動を目安に、脂肪を燃やしましょう!また、ある研究によると先生に倣いながら運動をすると短期間で効果的に筋力がアップするようです。

食生活において、無理な食事制限は禁物。続けられる範囲でよいので、タンパク質、繊維、ビタミンを豊富に含んだ様々な食材をバランスよく食べましょう!また、食べる順番もダイエットには効果的です。おかずから食べ始めましょう。脂肪や炭水化物を身体が吸収しにくくなり、血糖値の急な上昇を防げます。たとえば、食物繊維が豊富なごぼうやキャベツ、きのこ類をよく噛んで食べたら次に、お肉や魚などの主菜を食べ、最後にご飯やパンなどの主食を食べます。ゆっくりよく噛んで食べると糖質の摂りすぎや吸収を抑えられます。加えて、更年期世代の女性には植物性の女性ホルモン類似物質である大豆イソフラボンの効果も含めて、大豆はお勧めです!食事のコントロールと合わせてイソフラボンを摂取することで効果的なダイエットにつながるかもしれません。

いずれにしても、自分だけで悩みすぎないよう、周囲に理解を求め、専門家に相談できることも覚えておいてくださいね。運動やお食事についてはお近くのトレーナーや栄養士さんなどにご相談されてはいかがでしょう?

私ども啓和会も医療と介護の融合で地域のみなさんの健康な生活をサポートいたします。ぜひご相談ください。(金崇豪)

 

参考文献
◇中澤一弘 やせ 今日の臨床サポート https://clinicalsup.jp
◇Yang Zheng Associations of weight gain from early to middle adulthood with major health outcomes later in life JAMA.2017; 318(3): 255-69.
◇Molly B. Conroy Effectiveness of a physical activity and weight loss intervention for middle aged women: healthy bodies, healthy hearts randomized trial J Gen Intern Med.2014; 30(2): 207-13.
◇更年期・閉経後は痩せる 更年期で痩せる人・太る人とその原因 イソフラボン倶楽部 http://isoflavone.jp/column/

「男性の更年期障害」ってあるんですか?

Q : ストレスのせいかイライラすることが多く、妻や娘とも言い争うことも増えました。「男性の更年期障害」ってあるんですか? (49歳男性)

A:日頃からつのるイライラやつらい思い。でもおれは男、泣きとおすなんてできないよ。でも夜も眠れず寝汗でつらいし、なんだか不安で疲れやすい。外来にこんな方がいらっしゃると、日頃は漢方薬の出番。でも質問者様のおっしゃる通り、ストレスに対する反応に加えて、そのイライラ、男性ホルモンの減少が影響しているかもしれません。

医学上は加齢男性性腺機能低下症候群と呼ばれる、いわゆる「男性の更年期障害」は日本でも十数年前から知られるようになっており、2007年には日本泌尿器科学会、日本Men’s Health医学会公認で診療の手引きが発行され、その診療に際する最初のガイドラインが示されました。40代後半から60代でうつ病やメタボリックシンドローム、高脂血症や脳・心血管病変などのリスクとしても注目されています。

症状としてはのばせ・多汗、全身倦怠感、筋肉や関節の痛み、筋力低下、骨密度低下、頭痛・めまい・耳嶋、頻尿など。併せて、不眠、無気力、イライラ、性欲減退、集中力や記憶力の低下などとともにうつ症状が出る場合もあり、「男性の更年期障害」は、女性更年期障害とよく似た多様な症状が見られます。

週末は夜更かししてテレビを見ながらビールを飲んでお菓子をつまむ。日曜日は一日中横になって過ごしたりしていませんか?予防のためには生活習慣の改善が一番。適度な運動とバランスのとれた食生活が効果的です。筋肉を使うことでテストステロンが増え、ストレス解消にもなります。週150分程度のウォーキングやスロージョギングでメリハリをつけましょう。食事ではニンニク、タマネギなどのネギ類や、ヤマイモなどのネバネバ食品がおすすめです。また、良質な睡眠も大切。生活に張り合いが出るような趣味や生きがいを持ち、ストレスを解消しましょう。

それでも困った時は、当院内科へぜひご相談ください。漢方薬を中心として治療を考えることが出来るかもしれません。専門的な治療には泌尿器科や心療内科・精神科などスペシャリストの先生への紹介も含めて対応させていただきます。
(金崇豪)

 

参考文献
◇井手 久満 男性更年期障害(LOH症候群) 医療法人社団こころとからだの元気プラザhttps://www.genkiplaza.or.jp
◇石内裕人 第30回男性更年期の冷えと漢方治療 Kampo Square https://www.kampo-s.jp
◇岩本 晃明ら 日本人成人男子の総テストステロロン、遊離テストステロンの基準値の設定 日泌尿会誌.,95(6),p751-,2004.

頭痛持ちです。病院に行くタイミングを逃します

Q : 頭痛持ちです。鎮痛剤で治まるので、つい病院に行くタイミングを逃します。(37歳女性)

A : 頭痛は実によくある症状ですよね。頭の一部もしくは全体の痛みや首後ろ、頭の付け根や、眼の奥の痛みも含んで頭痛といいます。
頭痛は大きな分類で2つ、脳出血や骨折による頭痛など全身の病気による頭痛「症候性頭痛」と、頭の中や外そのものに異常のない「機能性頭痛・慢性頭痛」に分かれます。ご相談者様は頭痛持ちとおっしゃられると後者の慢性頭痛でしょうか。
慢性頭痛は、脳の機能障害によって引き起こされ、通常は器質的な異常を残しません。しかし、脳に一時的に何らかの病態が起こり、頭痛のみでなく様々な症候を生ずるものです。そして、自覚症状が主であるため患者さんとのお付き合いが長くなることの多い病気でもあります。
私どもはプライマリケア(かかりつけ医療)の役割として各科に横断的な診療を心がけております。頭痛に関しては、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛、後頭神経痛、薬物による頭痛などの機能性・慢性頭痛の治療に当たりながら、クモ膜下出血や髄膜炎、脳血管障害などの重篤な症候性頭痛の原因となる疾患には地域の総合病院、専門科の先生方と協力して診療にあたっています。
よくある疾患の症状と治療を簡単に紹介いたします。片頭痛は、生活に支障のある頭痛で日常動作により悪化します。悪心、嘔吐を伴い、音、光などの刺激で悪くなる傾向があります。緊張型頭痛は、両側からの圧迫や締め付け感が特徴で、持続時間は長く、ストレスや肩こりで誘発されます。通常は嘔気などは伴うことは少ないです。群発頭痛は、激しい頭痛発作が片側のそこかしこに集中して起こります。持続は15~180分(大部分は1~2時間)と言われます。
これら慢性頭痛の大規模な調査によると日本人成人の8.4%もの方が片頭痛に悩まされており、そのうち日常生活に支障がある方の割合は74%にも上ると言われます。その割に、定期的に医療機関を受診されている方はたったの2.7%に過ぎず、ざっと計算してみると1000万人近くのかたが日常生活に支障があるまま医療機関を受診せずに過ごしていることになります。これは社会の大きな損失につながる可能性のある大変な数字です。
近年は診断も治療薬も進んでおります。当院内科外来では専門医とも相談しながら診療にあたっております。また、通院が困難な状態の方々には川崎市川崎区小田地域を中心に訪問診療も行っております。お困りの方はぜひご相談ください。

参考文献
◇坂井文彦 頭痛の疫学と医療経済学 神経研究の進歩, 2002 p343-
◇五十嵐 久佳 片頭痛慢性化が社会活動に与える影響 臨床神経学 53巻11号 2013 p1225-
◇竹島多賀夫ら 頭痛 今日の臨床サポート 著者最終レビュー2018/10/26
https://clinicalsup.jp/jpoc

身体がダルく、微熱が1週間ほど続いています

Q : 最近、身体がダルい日が多く、微熱が1週間ほど続いています。(63歳女性)

 A : ダルさ=倦怠感・疲労と微熱ですね。診察室へも多くいらっしゃいます。今週はお出かけが続いて日中頑張りすぎたのか、夕方から始まる倦怠感と微熱に悩まされますが、朝になると幾分かよくなっている時にはどうしたらよいのか、いっしょに考えてみましょう。
倦怠感・疲労を訴える成人人口は1割から3割にも登ります。いつから症状があるのか、そして眠気や呼吸困難、筋力低下などほかの症状に有無が重要です。また 微熱は一般的に腋下温37.4℃までの体温上昇を言い、病的な発熱と、病的意義のないものの両方が含まれると言われます。原因や経過についてご本人といっしょに記録して、経過を追いながら考えてゆくことが大切で、時には体温表(熱型表)につけていただくこともあります。
微熱は自然軽快することがあるので、経過観察とすることが多いですが、苦痛が強い場合には、解熱剤を使います。一方で微熱は感染症や膠原病、薬剤熱などが原因のこともあり必要に応じて専門科と相談しながら診療にあたってゆきます。
また、倦怠感・疲労と切っても切れないのが睡眠障害です。眠るときには部屋を暗くしていますか?テレビやラジオ、携帯電話・タブレット等を寝室で使用していませんか?高齢の方は日中に明るい窓際で過ごし、昼と夜のリズムを付けることも重要です。睡眠障害は入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒などに分けられますが、自分にあった睡眠時間の確認や睡眠時の無呼吸の有無も治療方針にかかわってきます。もし、単純な睡眠時間の不足であれば、睡眠時間の確保、かたや時間がない方は日中30分以内の仮眠が効果的です。
6カ月以上継続する疲労は「慢性疲労」と呼ばれ、精神科的な疾患も考慮し専門科への相談も考えながら診療してゆきましょう。
当院内科では主に身体的な疾患については血液検査や画像検査を組み合わせて診断と治療を行ってゆきます。軽度の貧血やビタミン不足から眠気や倦怠感・疲労が見られることもありますので、ご相談者様もご家族様も健康診断からぜひご相談ください。(金崇豪)

参考文献
◇鈴木智晴 徳田安春 疲労・倦怠感 今日の臨床サポートhttps://clinicalsup.jp/jpoc
◇横江正道 野口善令 微熱  今日の臨床サポート
https://clinicalsup.jp/jpoc

最近よくため息が・・・すぐに疲れてしまいます

Q : 最近よくため息がでます。好きだった買い物もすぐに疲れてしまいます。(55歳女性)

A : 女性の50代、子育てもお仕事もひと段落、さぁこれからますます人生が充実してくる年代!とはいえ、どなたでも気分の波はありますよね。まずはお食事、睡眠、運動などご自身の生活の見直しからです!鉄分やビタミン、繊維質、タンパク質など栄養のあるものをしっかり摂りましょう。夜更かしに気を付けて、散歩やジョギング、筋力トレーニングなども時に有効です。しかしながら、楽しめていた趣味が楽しめない、集中力が続かない、食べられない、眠れない、考えられないなどの不調が長く続いて生活に支障をきたすようでは注意が必要です。あまり悩みすぎずに医療機関に相談することも選択肢の一つです。

いわゆる町の診療所、プライマリケア医を受診される方の一部はうつ病圏であるといわれ、その代表的な症状として、1)ほとんど毎日の抑うつ気分、2)興味、喜びの著しい減退、3)著しい体重減少、あるいは体重増加、4)睡眠障害、5)精神運動性の焦燥または制止、6)易疲労性、気力の減退、7)無価値感、不適切な罪責感、8)思考力や集中力の減退、9)自殺念慮、自殺企図――が挙げられます。
鑑別診断としては適応障害、軽躁・躁病などの精神疾患から、更年期障害や甲状腺機能障害などの身体疾患および薬剤や認知症、低活動性せん妄、アルコール誘発性を考慮します。

抑うつ症状をきたす方の中には背景に実社会における様々な不安を抱えている方も多くいらっしゃり、治療方法の判断は難しいことも多くあります。当院では院内外の専門の先生とも連携しながら、安定期の治療継続などに携わっております。質問者様もお気軽にご相談ください。
また、当院の物忘れ外来には、楽しめない、食べられない、眠れないなど訴える方も多く来院されますが、ご高齢の方は薬物療法による副作用が出現しやすいため、抑うつ症状に対して薬剤を使用する際は少量から開始し、ご本人だけでなくご家族とも情報共有しながら経過にあわせて慎重に薬剤の種類や量を調節しています。

参考文献
◇上島国利 尾鷲登志美 うつ病:今日の臨床サポートhttps://clinicalsup.jp
◇木村勝智 プライマリ・ケアにおける「不安」の評価法 総合診療 27巻9号 (2017年9月)
◇谷将之 大坪天平 高齢者のうつ病 (押さえておきたい! 心身医学の臨床の知 44)
– 心身医学, 2012

よくつまづきます。父がパーキンソン病でした

Q : 最近、家の中でよくつまづきます。父がパーキンソン病でしたが、まさか遺伝はしませんよね。(57歳女性)

A:段差も何もないところで転んでしまうこと、ありますよね。私の友人は足の小趾をぶつけることが多く困っています。さて、パーキンソン病とは、振戦(ふるえ)、動作緩慢、筋強剛(筋固縮)、姿勢保持障害(転びやすいこと)の4つを主な運動症状とする病気です。つまづきやすい=転びやすいと解釈してお話を進めていきましょう。
パーキンソン病は50歳-65歳で起こることが多い病気です。40歳以下で起こる場合は、若年性パーキンソン病と呼ばれます。
ほとんどの方では特別な原因はありません。神経細胞の中にαシヌクレインというタンパク質が凝集して溜まることがありますが、食事や職業、住んでいる地域など、原因となる特別な理由はありません。根本的原因は特定されていませんが、病態として大脳の下にある中脳の黒質ドパミン神経細胞が減少することで体が動きにくくなり、ふるえが起こりやすくなります。

質問者様もご心配の点ですが、パーキンソン病の9割以上は遺伝しません。稀に、若年性の一部で家族内に同じ病気の方がおられ、遺伝子が確認されると家族性パーキンソニズムと言われます。最近は,孤発性か家族性かを問わず、遺伝子の異常,あるいは遺伝子と環境因子の相互作用でおこる疾患であると考えられるようになり、治療法の開発研究も神経変性機構への介入実験を通じて進められているのが現状です。

症状には運動症状と非運動症状があり、運動症状として初発症状はふるえ(振戦)が最も多く、次に動作の緩慢さ、痛みなどがありますが、姿勢保持障害やすくみ足、筋強剛で発症することはないようです。ふるえは安静時の振戦で、動かすとふるえは小さくなります。動作緩慢は動きが遅くなり細かい動作がしにくくなることです。最初の一歩が踏み出しにくくなる「すくみ」が起こることもあります。姿勢保持障害はバランスが悪くなり転倒しやすくなることです。姿勢保持障害は病気が始まって数年してから起こります。筋強剛は他人が手や足、頭部を動かすと感じる抵抗を指しています。運動症状のほかには、便秘や頻尿、発汗、易疲労性(疲れやすいこと)、嗅覚の低下、起立性低血圧(立ちくらみ)などの自律神経障害や、気分が晴れない(うつ)、興味が薄れたり意欲が低下する(アパシー)、認知機能障害、睡眠障害などの多彩な非運動症状も見られ、パーキンソン複合病態として認識されることもあります。

治療の基本は薬物療法です。ドパミン神経細胞が減少するため少なくなったドパミンを補うためにドパミンの材料であるL-ドパやL-ドパの作用を強める代謝酵素阻害薬、それらの合剤を服用します。また、ドパミン神経以外の作用薬に、アセチルコリン受容体に作用する抗コリン薬、グルタミン酸受容体に作用するアマンタジン、アデノシン受容体に作用するイストラデフィリン、シグマ受容体に作用するゾニサミドがあります。さらに、難治例には手術療法は脳内に電極を入れて視床下核を刺激する方法も行われます。
日々の中で気を付けることができるのは運動です。体を動かすことは体力を高め、パーキンソン病の治療になります。激しい運動ではなく、散歩やストレッチなど、毎日運動を続け体力を高めることは重要です。また、気持ちを明るく保つことも重要です。気分が落ち込むと姿勢も前かがみとなり、動作も遅くなります。私たちが意欲を持って行動する時は脳内でドパミン神経が働いていると考えられています。日常生活の過ごし方も大事な治療ですので、ぜひ工夫してください。
パーキンソン病の中にまれに遺伝が関係するものもあるようです。気にかかる症状があれば遠慮なくご相談ください。当診療所内科では専門科の先生と連携して診療にあたっております。(金崇豪)

参考文献
◇葛原 茂樹 パーキンソン病治療の現状と展望 臨床神経,48:835-843, 2008
◇変性疾患部門(家族性パーキンソン病)順天堂大学医学部付属順天堂医院ホームページhttp://www.juntendo-neurology.com/n-hensei2.html 2018年9月7日アクセス
◇パーキンソン病 難病情報センターホームページ http://www.nanbyou.or.jp/entry/169 2018年9月7日アクセス

 

母が最近外出しなくなりました。若年型認知症?

Q : 以前は毎週のようにカラオケに行っていた母が、最近外出しなくなりました。まだ55歳なので認知症ではないと思うのですが・・(30歳女性)

A : 55歳。家庭内では子育てや受験もひと段落、キャリアでは管理職、充実した日常の中にも更年期障害をはじめさまざまな健康問題が気になる頃ですね。
そもそも認知症とは「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」をいいます。
DSM-IVという診断の基準では、記憶障害に加えて失語、失行、失認、遂行機能障害などの認知欠損があること、それらにより社会的・職業的機能の障害があること、せん妄の経過中にのみではない認知欠損がある、などの項目があります。

認知症の原因としてはアルツハイマー病が最も多く、ピック病など前頭側頭型認知症は、記憶障害よりも性格・行動面の変化が目立ち、レビー小体型認知症はアルツハイマー病とパーキンソン病の特徴を併せもつといわれます。脳血管性認知症の診断には認知症状態・脳血管疾患の存在、症状と脳血管障害発症の時間的関連性が必要となります。また、治りうる認知症としてはうつ病の仮性認知症と薬物惹起性の認知症様状態が有名で、さらに、スピロヘータ、HIVウイルス、プリオンなどによる感染症が認知症の原因となることもあります。
さて、お母様は55歳。65歳までに発症する若年型認知症の診断はいろいろな意味で「難しい」とされます。一方で鑑別診断は多岐にわたり遺伝的要因の可能性が老年性認知症よりも高くなるため、認知症進行の病態を理解する重要な手掛かりがあるとされ診断、治療の研究が進んでいます。

若年型認知症の治療法として、症状の進行を緩やかにする薬物治療と併せてデイケアなど各種の心理・社会的な非薬物療法があります。また、日々の介護で心身ともに疲れきっている介護者への介護という視点も大切であり、認知症の精神症状・行動異常に対して、介護保険など社会的支援制度、薬物治療、非薬物治療を含めたアプローチをいたします。日本全国の若年性認知症は4万人弱と推計されており、血管性認知症とアルツハイマー病が多いのですが、うつ病などの精神疾患との見極めが難しく、高齢者の認知症よりも障害雇用などの社会的サポートの充実が必須と言われています。
質問者様のお母様の場合ですと、外出が減った事実のみで即、認知症とは言い過ぎかもしれません。当診療所は専門医への紹介や福祉事務所との連携を通して、さらに当法人全体で医療と介護が力を合わせて地域の認知症ケアをサポートしております。お気軽にご相談ください。(金崇豪)

参考文献:
◇厚生労働省「知ることから始めようみんなのメンタルヘルス総合サイト」(最終閲覧日2018年8月5日)https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_recog.html
◇Martin N Rosserら the diagnosis of young-onset dementia. Lancet Neurol. August;9(8):793-806.
◇小長谷 若年性認知症の実態及び支援の現状と課題。老年精神医学雑誌28:1039-1046、2017
◇干場功 行政政策プランに伴うリスク‐若年性認知症に対する施策を中心に‐。老年精神医学雑誌29:171-175、2018

最近ストレスのせいか生理が不安定

Q : 社会人になって半年が経ち、ようやく仕事にも慣れてきました。でも最近ストレスのせいか生理が不安定です。(23歳女性)

 

A : 23歳、新入職のフレッシュなお年ですね。ストレスと言えば5月病、最近では研修期間1か月分遅れて「6月病」もあるようですが、今回は生理=月経が話題です。
月経は女性にとって健康的な日常生活を送るために必要な生理現象で、腹痛やむくみ、頭痛などで悩まされることが多いも、一方で女性の健康のバロメーターでもあります。通常は約1カ月の間隔で起こり、この周期の異常を月経不順と言い、月経に伴う不快症状は月経前症候群や月経困難症と呼ばれます。

月経周期の長さによって頻発月経、稀発月経、無月経に分けられ、最長月経周期と最短月経周期との差が7日以上のものは不整周期月経と呼ばれます。

重症な場合は別ですが、機能的な月経不順のほとんどは経過観察のみで十分とされます。治療の対象となるのは次のような場合です。全身状態の悪化や社会生活に支障をきたしている場合、挙児希望にもかかわらず1年以上妊娠に至らない場合、卵巣機能不全が疑われる場合や肥満・るい痩が認められる場合などは産婦人科、内分泌代謝内科、精神科など各専門医に紹介も念頭に次のように診療に当たります。

まず妊娠を除外し、次に子宮頸がん・体がんなどの婦人科器質的疾患を除外し、基礎体温表を参考にしながら機能性の月経不順を診てゆきます。思春期にみられる月経不順では、神経とホルモンを調節する視床下部の未熟性のための無排卵性周期症が多く、初経の後、性成熟期まで続く月経不順は、多嚢胞性卵巣症候群によるものが多いとされます。性成熟期になってから出現する月経不順は、体重減少や精神的・肉体的ストレスから来る視床下部の機能異常によるものが多いようです。また、45歳以上にみられる更年期月経不順では、卵巣機能低下が原因とされます。

頻度の高さでは思春期月経不順、更年期月経不順、多嚢胞性卵巣症候群、視床下部性(運動性、心因性、体重減少性)、黄体機能不全、高プロラクチン血症などがありますが、重症度では神経性食欲不振症も無視できません。また、稀ではありますが、甲状腺機能異常、クッシング症候群、分娩後汎下垂体機能低下症(シーハン症候群)、アンドロゲン産生性腫瘍(卵巣、副腎)、エストロゲン産生性腫瘍(卵巣、副腎)なども挙がります。
繰り返しになりますが、月経周期の異常と一口に言っても妊娠に伴う性器出血や子宮筋腫など器質的疾患による不正性器出血を月経不順として捉える方も多い様です。

相談者様も、定期的な妊娠チェックや婦人科検診などを心がけ、お悩みがあればご同僚や上司様、ご家族に相談されるのもよいかと存じます。また、適正体重と適度な運動、夜は電気を消して良質な睡眠をとることで月経症状や月経不順は軽くなるとも言われますので参考までに。
なお、内科的なチェックや総合病院専門科へのご紹介は当院外来で行っておりますのでご相談ください。(金崇豪)

 

参考文献:
佐藤幸保監修.”月経不順”.今日の臨床サポート.
https://clinicalsup.jp/jpoc/searchDetails.aspx?SearchTerm=1704&SearchTerm=すべて&SearchText=月経不順.(参照2018-7-1)

宮内文久ら.”夜間勤務時のホルモン動態と月経異常”.産業医学.1992,34,p.545-550

佐久間夕美子.”若年女性の月経前期および月経期症状に影響を及ぼす要因”.日本看護研究が会雑誌.2008,31,2,p.25-36

カラオケに行っても以前のように調子が出ません

Q : カラオケに行っても以前のように調子が出ません。知り合いにはボイストレーニングを勧められたのですが、なかなか敷居が高くて乗り気になれません。他に何か良い方法はあるでしょうか?(60代男性)

A : アンチエイジングの波は声まで来ているようですね!!カラオケは日本の文化。健康維持と社会貢献の観点から声はアンチエイジングの良いターゲットになっております。
声は呼気流で声帯が振動することにより発生します。十分な肺活量、健常な声帯粘膜の振動、さらに口腔、咽頭、鼻腔による共鳴が声の音色を形作ります。
声帯細胞が老化するとビタミンA含有量が低下し、ヒアルロン酸やコラーゲンの産生が低下します。この変化は男性により顕著で、声帯粘膜は委縮し固く変性します。また横隔膜などの筋力低下や脊椎の前弯による胸郭の変形で呼吸機能が低下すると声門下圧が下がります。共鳴腔の老化は軟口蓋の筋肉、咽頭括約筋の減弱化とともに音色の形成、声の響き、滑舌などに影響を与えます。
声のアンチエイジングとしては、声帯の潤いのための十分な水分摂取や胃酸逆流症のコントロールが重要です。また、大声、高い声や囁き声の乱用にも気を付けましょう。質問者様がお知り合いに勧められた発生訓練(音声治療)も声帯筋をはじめ呼吸・共鳴の適正化を目指した治療として行われます。サプリメントでは抗酸化物質のアスタキサンチンもビタミンCの6000倍ともいわれるその強力な抗酸化作用とともに有用性が認められているようです。併せて、また、最近では線維芽細胞増殖因子を声帯に直接注射する再生治療が行われている施設もあるようです。
敷居の低いところでは、水分補充と胃酸の逆流、骨粗鬆症の治療から始めてみてはいかがでしょうか?当診療所、内科・整形外科外来でご相談ください。興味深い質問ありがとうございました!(金崇豪)