健康診断で肝臓が悪いといわれ続けています

Q : 以前から健康診断で肝臓が悪いといわれ続けています。以前にお世話になった病院で脂肪肝といわれましたが薬はもらえませんでした。飲酒習慣はありませんが仕事が忙しく病院受診はつい後回しになってしまいます。健康のためにはどういうことに気を付ければよいのでしょうか?(34歳男性)

A:お忙しい中ご質問ありがとうございます!定期健診や人間ドックは受けただけではもったいない。健康診断の結果はぜひ活用しましょう。
肥満や高脂血症、血糖異常の合併に注意した生活習慣の改善と内科受診の組み合わせが健康生活の「肝(きも)」です。
職場などで定期的に行う健康診断は生活習慣病の項目もカバーしており、肝臓が悪い=肝機能障害の所見は受診者の15%以上、つまり6-7人に1人の方に見られます。飲酒の頻度は世代の流れでだんだん減っている中、アルコール以外の生活習慣を背景にした肝障害への対応はますます注目されています。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)における肥満・生活習慣病合併の状況は性別年齢ごとの特徴があります。若い男性ではコレステロール異常(脂質異常症)、若い女性では高度肥満が多く、更年期以降の女性では2型糖尿病の合併が見られます。一方、肥満はメタボリックシンドロームの最も主要な症候であり、その肝臓病変であるNAFLD/NASHにおいても、肥満が最も重要な危険因子とされます。
専門的な指標での肥満とNAFLD/NASHの合併率について、ボディマス指数(BMI)23以下では10%、BMI 30以上の高度肥満者では80%といわれますが、アジア人は軽度の肥満でも臓器障害が強く表れるといわれ、さらに注意が必要です。

では何に気を付けたらよいのでしょうか?そのヒントは腸と肝臓の連関にあります。高脂肪食の摂取、急性腸炎、抗生物質の投与等により腸内細菌叢が乱れ、腸管透過性が亢進して血中のlipopolysaccharide(LPS)濃度が上昇する代謝性エンドトキシン症が生じて腸管から門脈を通して肝臓へ流入し、炎症を惹起し遷延を誘導することが分かってきました。カロリー計算だけのダイエットでなく、精製した炭水化物中心の高エネルギー低栄養の食事からビタミンや繊維の豊富な低エネルギー高栄養の食事に切り替えることも考えてゆきましょう。

果糖(フルクトース)は、体内では、エネルギー源となったり、ブドウ糖に変換されたり、トリグリセリド(中性脂肪)の材料になる。果糖は筋肉や肝臓で代謝される。フルクトースの取りすぎは高脂血症の原因となったり前述の腸管連関を通じて肝の繊維化等を来たしたりするため、果糖ブドウ糖液糖と表示のある甘い飲料水の取りすぎにも注意が必要です。

健康診断で指摘された肝障害は放置せず、早めの生活習慣の改善を含めてご相談ください。啓和会は介護と医療の融合で地域の皆様の健康生活を支えます。(金 崇豪)

◇厚生労働省「定期健康診断調」
◇特集 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)の最新知見 日本内科学会雑誌109: 2020
◇果糖の代謝 – fc2web.com 最終検索2月16日2020年
hobab.fc2web.com/sub4-Fructose_Metabolism.htm

糖尿病、遺伝する率は高いのでしょうか?

Q : 亡くなった父が糖尿病だったのですが、遺伝する率は高いのでしょうか?最近は砂糖を控えたり、ご飯の量を減らしたりしています。(46歳男性)

A : 気になりますよね、生活習慣病。46歳ですと働き盛り、食べ盛り(?)でおなかが気になる今日この頃でしょうか。実は、一口に糖尿病といっても1型糖尿病と2型糖尿病は原因の異なる病気です。生きるために絶対に必要なインスリン(ホルモン)が何らかの原因で分泌できなくなった1型糖尿病と、肥満・加齢・運動不足などによって少しずつ分泌不足、作用低下になる2型糖尿病とがあります。
病気の原因については、1型・2型のいずれも発病の背景となる遺伝子異常に加えて、発病の引き金になる環境(生活習慣など)があると言われます。1型と比べて2型糖尿病は遺伝リスクが大きいこともわかっています。
遺伝するのは糖尿病そのものではなく 「糖尿病になりやすい体質」です。この体質を持った人に、食べ過ぎ、運動不足、肥満、加齢、ストレス、感染症などさまざまな環境因子が加わってはじめて糖尿病が発症すると考えられます。2型糖尿病の原因となる遺伝子異常は何種類かの軽い異常が多数積み重なることによってその体質を形成している「複合遺伝」といわれており、糖尿病の遺伝的素因は複雑だと言われています。また、2型糖尿病を含め、成人病には遺伝的素因の他に、食習慣、運動不足、肥満、ストレス、酒・たばこなどの嗜好といった環境的要因が大きく影響します。
民族で比べると、幸運なことにアジア人は欧米の白人と比べる1型糖尿病のリスクは低いのですが、残念なことに2型糖尿病では肥満が軽度なのに糖尿病になる例が多いと言われます。
さて、糖尿病の合併症の多くが腎症、網膜症など比較的小さな血管の障害が中心であり、糖尿病は実は血管の病気であるとさえいわれます。また、糖尿病と並ぶ生活習慣病の一つ、高脂血症などによる動脈硬化は心筋梗塞、脳梗塞などの原因となり大血管の障害も見逃せません。下肢への血行が原因で歩行障害や下肢の切断にもつながることがあります。
「糖尿病は治らない」 とよく言われますが、これは真実です。しかしながら合併症が出ないように管理しながら上手に付き合えば糖尿病に負けずに生きてゆくことは可能です。
糖尿病に負けない最善の手段は、言うまでもなく発症を未然に防ぐことです。そのためには定期検診を受けましょう。 検診で糖尿病そのものが発見される場合や、糖尿病になりやすい体質を指摘される場合もあります。 肥満、食べ過ぎ、運動不足、お酒の飲み過ぎといった危険なライフスタイルについて注意を受けることもあるかも知れませんが、それを機会と捉えて生活習慣の改善につなげましょう!!
糖尿病は家族歴がなくても安心してはいけません。特にアジア人は高リスクの民族です。ぜひご相談ください、内科外来でお待ちしております。(金崇豪)

最近汗かきになってしまいました


Q : 汗をかかない体質でしたが、最近汗かきになってしまいました。昨年結婚してので食生活が変わったのが原因でしょうか?
(36歳男性)

sick_takansyouA:運動して汗をかくのは気持ち良いものですが、間の悪い時に汗が止まらないのも困りものです。汗が出るのは汗腺や自律神経が関係しており、汗が多いことは「多汗」といいます。アルコールや肥満、ストレスなども多汗の原因にはなるようです。食生活の変化によるものの可能性も考えられますね。一方で薬剤や内臓疾患による多汗も時に見られるようです。まずは生活習慣の改善のもと、それでも気になる点あればご相談・ご受診いただくことをお勧めいたします。
(小澤穣)