他人と付き合うのが苦手です。疲れます

Q : 他人と付き合うのが苦手です。疲れます。(48歳女性)

shinpai_obasan

A : 他人との付き合いで疲れやすいのは、性格的な傾向やストレスの影響が強いかもしれません。無理に変える必要はありませんが、「距離を置く」「疲れる前に休む」といった工夫を取り入れるだけでも楽になります。心身の調子が不安定な時は、専門家の力を借りることも選択肢の一つです。

人といっしょにいる時間が好きな人もいれば、その逆の人もいるのが当たり前です。しかし、他人との関わりが「疲れ」として強く現れる場合、いくつかの原因が考えられます。まず、緊張や不安感があります。人と接する際に相手の反応や自分の言動に強い不安を抱くと、心が緊張し、エネルギーを消耗してしまいます。これは社会不安障害や対人恐怖症といった心理的な症状が関与している場合もあり、緊張が高まるたびに心身が疲弊します。また、性格的な傾向も無視できません。内向的な人や、繊細な気質を持つ方は、他人と接すると多くの刺激を受けやすく、その分エネルギーを消耗しやすいといわれます。そういった方々にとって、ほんの数時間の交流でも大きな疲れを感じることがあります。さらに、過去のつらい体験が影響している場合もあります。かつての人間関係で傷ついた経験があると、それが無意識に現在の付き合い方にも影を落とすことがあります。

こうした心の疲れと向き合うためには、自分のペースで少しずつ変化を取り入れることが大切です。無理をせず、自分に合った方法でストレスを軽減することが第一歩です。例えば、気持ちが落ち着かないときは、深呼吸をしたり、軽い運動を取り入れたりして自分の心身をいたわるセルフケアが有効です。生活リズムを整えながら、こうした小さな健康行動を積み重なることで、日々の疲れが少しずつ軽減されるでしょう。
また、人付き合いに自信を持つためには、少人数の人との交流から練習を始めるのが効果的です。最初から大人数の集まりに無理に参加するのではなく、気の合う友人や家族との時間を通じて、少しずつ自分の心に成功体験を積み重ねていきましょう。「自分はこれができた」と感じる経験が、未来の自信へとつながります。
そして、自分が「疲れている」と感じたときには、無理をして付き合い続ける必要はありません。体の体力はもちろん、自分のこころのエネルギー残量にも気を配り、疲れる前に休むことが大切です。長時間の会話や社交の場から帰宅したら、一人の時間をしっかり確保し、自分を癒す時間をつくりましょう。また、日記に気持ちを書き出したり、信頼できる相手に話を聞いてもらったりすることで、心がスッと軽くなることがあります。
そして、何よりも重要なのは、自分を責めすぎないことです。他人と付き合うのが苦手なことを「弱さ」と捉える必要はありません。それはあなたの個性の一部であり、無理に変える必要はないのです。自分にはこうした傾向があると受け止めたうえで、「今日は少しだけ頑張ってみよう」「無理なときは距離を置こう」という柔軟な考えを持つことで、付き合い方は自然と楽になっていきます。

もちろん、長期間にわたって気分が落ち込み、日常生活にも支障が出ている場合は、専門家に相談することをためらわないでください。専門的な医療機関に受診することは必要となりますが、認知行動療法(CBT)やマインドフルネスといった研究で効果が認められている治療法もあります。また、最近の研究では、自分の性格の特性を知ること、自分の繊細さを受け入れて適切な対処法を学ぶことで、人付き合いに対する不安や疲れを減らせることがわかってきています。

人と接するのが苦手だと感じることは、恥ずかしいことではありません。その特性を理解し、上手に付き合っていく方法を見つけることが大切です。無理に自分を変えようとせず、「疲れる前に休む」「自分のペースで進む」という工夫を日常的に取り入れるだけでも、心の負担は軽くなります。そして、どうしてもつらいときは、専門家の力を借りるのも賢い選択肢の一つです。日々の生活で疲れを感じたときには、どうか自分を優しくケアしてください。

啓和会では、医療と介護の融合で地域の皆様の暮らしを支えます。ご病気、物忘れやご家族の介護や療養支援等で困っている方、お疲れの方はいらっしゃいませんか?お住いの地域包括センターやケアマネージャーさんをはじめ、各種ご相談ご案内可能です。是非声をおかけください。
内科医師 金

参考)
【チェックリストあり】「不安症」いま患者が増加 日常生活に影響も | NHK | WEB特集 | 医療・健康

ストレスで気が落ち着かず眠れません

Q : 時節柄でしょうか、気が落ち着かず眠れません。ストレスは感じていますがどうしたらよいでしょうか?(32歳女性)

A : 30歳代は、職場環境や人間関係にも慣れて日常生活も軌道に乗るといわれる頃。周囲からの期待もあるのではないでしょうか?病気や家族・友人との出来事など沢山のことがストレスの原因になっていることでしょう。身体だけでなくメンタルの健康も当然心配になってきますよね。今回ご紹介するストレスへの対応が、一筋縄ではいかないこの時代をみんなで生き抜く一助になれば幸いです。

ストレスとは、もともと物理学の専門用語で、物体の外側からかけられた力によって歪みが生じた状態を言います。一方、普段私たちが「ストレス」と言っているものは、「心理・社会的なストレスの源、ストレッサー」のことを指しています。職場や家庭など生活のありふれた場面で、仕事や家事の作業や対人関係などの要因がストレッサーとなり得ます。これらによって引き起こされるストレス反応はポジティブ、ネガティブの2つに分類でき、更に心理面、身体面、行動面の3つに分けることができます。

例えば、集中力の向上、楽しさや活気の上昇、高揚感などのポジティブな心理反応に対して、活気の低下、イライラ、不安、抑うつ(気分の落ち込み、興味・関心の低下)などはネガティブな心理面での反応です。

身体面でのストレス反応には、力のみなぎる感じ、爽快感などのポジティブな反応から体のふしぶしの痛み、頭痛、肩こり、腰痛、目の疲れ、動悸や息切れ、胃痛、食欲低下、便秘や下痢に加えて不眠などさまざまなネガティブな反応があります。

また、単純作業における手際の向上、早めの睡眠や健康な食事や周囲の人への相談などのポジティブな行動変容も見られる一方で、逆にクリエイティブな業務における想像力や効率の低下、飲酒量や喫煙量の増加、仕事でのミスや事故、ヒヤリハットの増加などはネガティブな行動面でのストレス反応も見られます。

ストレスに対処する行動としては、ストレスそのものに働きかけてストレスをなくしてしまう根本的な方法や、自分自身の工夫や周囲への相談、ルールの変更などでストレスへうまく対応して解決する方法、さらにストレスによって発生した自分の不安感や怒りなどの感情を周囲の人たちに聴いてもらい上手に発散する方法などがあります。日頃からストレスが発散できるよう、趣味や生きがいとなるものを持つことや、なにかと協力してもらえる人間関係も重要となります。

自分自身でできる対処行動として大切なのは、まずストレスを受けている自分に気づく(気づいてもらう)ことです。そしてそのストレス反応が頭痛・動悸・不眠・飲酒増加・ヒヤリハットであることを知っておくことが有効です。もし自分や周囲の人が不安やイライラ、活気の低下、興味関心の低下にとらわれていることに気づいたら、その状態を責めることなくネガティブな感情から立ち戻り、最も大切な生きがいに沿って行動すること、意識的に周囲の人に親切にすること、呼吸法や瞑想、マインドフルネスなどネガティブな感情を和らげる方法をみんなで試してみましょう。時間をかけても練習する価値のある、あの世界保健機関WHOお墨付きの方法です!

質問者様は眠れず困っておられるようですね。睡眠も質と時間が重要です。まずは飲酒や夜のスマホなどを控えて、ストレッチやヨガなど適度な運動やリラクゼーションで睡眠の質を上げてみませんか?十分な睡眠がストレスからの回復には重要です。人にもよるようですが、個人的には3時間程度の仮眠ではなく、6、7時間程度の十分な睡眠時間をお勧めしています。作業の効率や気分にも良い影響がみられますよ。繰り返しになりますが、自分で対応しきれないときは決して無理をせず周囲の人たちの協力も仰いで、よりよい解決の糸口を目指しましょう。窮地に陥った時に相談できる人を持ち、適切なケアを適切なタイミングで受けることは我々が健康で効果的な社会活動を続けるために極めて重要です。

ストレスは、私たちが生きていく上で避けることのできないものですが、うまく対応することができれば自分や組織の成長にもつながります。気づきと工夫、思いやりは我々が人生を豊かに送る助けになります。みんなでこのストレスフルな現代社会を乗り切ってゆきましょう!
当院内科外来は専門医療機関とも連携しながら介護と医療を融合して、地域の皆様の健康生活をサポートいたします。お気軽にご相談ください。(金崇豪)

 

◇厚生労働省 こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
HOME>ストレス軽減ノウハウ
https://kokoro.mhlw.go.jp/nowhow/nh001/
◇Doing What Matters in Times of Stress: World Health Organization
https://www.who.int/publications-detail/9789240003927
◇睡眠時間が翌日終日の認知・運動機能に与える影響
ITヘルスケア 2008 年 3 巻 2 号 p. 96-105

耳鳴りで眠れない時もあります

Q :  最近、耳鳴りが多く眠れない時もあります。飛行機に乗っているときのような高い音です(56歳男性)

A : 耳鳴りで眠れないのはつらいですね、眠れなかったり仕事に集中できなかったり。耳鳴りは悩みの種です。56歳の働き盛り、このコラムがセカンドライフを満喫する準備の一助になれば幸いです。
まず、一過性のものなら心配無用です。突然の耳鳴りがすぐおさまれば心配いりません。症状が長引いたとき、体の症状を伴う場合は相談・受診をしましょう。意識障害、頭痛、椅子にも座れなかったり手足が動かなかったりするときは、すぐに医療機関を受診しましょう。
さて、耳鳴りの原因です。多いのは年齢・騒音・内耳(鼓膜の内側)の異常があげられます。時にはメニエール病、顎・頭・首のケガ、耳管の異常などによっておこることもあります。また、音の高・低から連続・不連続、主観的・客観的といった性質により原因を推察することもできます。例えば高血圧や動脈硬化により、低音で拍動性の耳鳴りが客観的にも聞こえることがあります。お薬ではポリミキシンBやエリスロマイシン、バンコマイシンなどの抗生剤、利尿剤、いくつかの抗うつ薬や抗がん剤なども原因となります。
脱水、騒音、年齢、男性、喫煙、高血圧や動脈硬化が耳鳴りの増悪因子です。合併症として疲れ、ストレス、睡眠障害、記憶障害、抑うつ、不安・緊張などが悪くなることがあります。休みの日は煙草を片手に水も飲まずに長時間パチンコなんて生活はあまり感心できません。ご家族・同僚といっしょに生活を見直して改善するチャンスにしましょう!
また、最近の研究によると、瞑想のようなマインドフルネスに基づく教育プログラムもあり、耳鳴りとそれに伴う症状にある程度の効果があるようです。
当院では、内科外来から専門科クリニックや総合病院の先生と連携しております!お気軽にご相談ください。

◇耳鳴りとめまい トヨタ記念病院 ホームページ
https://www.toyota-mh.jp/kenkou/miminari.php
◇Tinnitus Mayo Clinic Patient Care & Health Information
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/tinnitus/symptoms-causes/syc-20350156

あがり症で結婚式のスピーチが心配です

Q : あがり症で、人前に出ると言いたいこともすっ飛んでしまします。友人の結婚式のスピーチに向けて一時的な対処方法は?(28歳男性)

A : 友人や親戚の結婚式、スピーチはつきものですよね。苦手であっても新郎新婦の晴れの舞台ですから頼まれれば断りにくいものです。
さて、人前での発表などで起きやすい「あがり症」は比較的強い不安ですが、日常生活や社会機能を著しく障害しなければ正常範囲の不安とも言われます。一方でこの「あがり症」は精神疾患の社交不安障害との類似も多く、これら「不安」にはカウンセリングや瞑想、運動、認知行動療法、薬剤で症状が改善することが分かっています。
カウンセリングでは生活のストレスについて話し合い問題領域を特定すること、特定された問題領域への対処法について話し合うこと、問題に対する進展の評価や臨床的要求について話し合うなどのステップを踏みます。また、近頃流行りのマインドフルネスや瞑想も不安だけでなく痛みや抑うつに対して、ある程度は効果があるようです。また、認知行動療法はより効果的で、認知行動療法単独でも薬剤と組み合わせても行われます。薬剤ではベンゾジアゼピン系や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が効果的であるといわれます。
心理学的なアプローチからは「あがり症」の原因には失敗への不安、責任感、性格感情などの個人の特性、準備不足感、新奇性、他者への意識や劣等感などがあるようです。一時的ではありますが手軽な対処として、声を出して繰り返し練習するなど準備に十分な時間をかけることで、失敗への不安や準備不足感を減じてみてはいかがでしょうか?
任されたスピーチを準備した通り流暢にこなすのも良し、初々しく「あがってしまう」謙虚さを魅せるのもまた良し。いずれにせよスピーチを引き受けたそのこころざしは新生活への花向けになること間違いなしです!(金崇豪)