ストレスで気が落ち着かず眠れません

Q : 時節柄でしょうか、気が落ち着かず眠れません。ストレスは感じていますがどうしたらよいでしょうか?(32歳女性)

A : 30歳代は、職場環境や人間関係にも慣れて日常生活も軌道に乗るといわれる頃。周囲からの期待もあるのではないでしょうか?病気や家族・友人との出来事など沢山のことがストレスの原因になっていることでしょう。身体だけでなくメンタルの健康も当然心配になってきますよね。今回ご紹介するストレスへの対応が、一筋縄ではいかないこの時代をみんなで生き抜く一助になれば幸いです。

ストレスとは、もともと物理学の専門用語で、物体の外側からかけられた力によって歪みが生じた状態を言います。一方、普段私たちが「ストレス」と言っているものは、「心理・社会的なストレスの源、ストレッサー」のことを指しています。職場や家庭など生活のありふれた場面で、仕事や家事の作業や対人関係などの要因がストレッサーとなり得ます。これらによって引き起こされるストレス反応はポジティブ、ネガティブの2つに分類でき、更に心理面、身体面、行動面の3つに分けることができます。

例えば、集中力の向上、楽しさや活気の上昇、高揚感などのポジティブな心理反応に対して、活気の低下、イライラ、不安、抑うつ(気分の落ち込み、興味・関心の低下)などはネガティブな心理面での反応です。

身体面でのストレス反応には、力のみなぎる感じ、爽快感などのポジティブな反応から体のふしぶしの痛み、頭痛、肩こり、腰痛、目の疲れ、動悸や息切れ、胃痛、食欲低下、便秘や下痢に加えて不眠などさまざまなネガティブな反応があります。

また、単純作業における手際の向上、早めの睡眠や健康な食事や周囲の人への相談などのポジティブな行動変容も見られる一方で、逆にクリエイティブな業務における想像力や効率の低下、飲酒量や喫煙量の増加、仕事でのミスや事故、ヒヤリハットの増加などはネガティブな行動面でのストレス反応も見られます。

ストレスに対処する行動としては、ストレスそのものに働きかけてストレスをなくしてしまう根本的な方法や、自分自身の工夫や周囲への相談、ルールの変更などでストレスへうまく対応して解決する方法、さらにストレスによって発生した自分の不安感や怒りなどの感情を周囲の人たちに聴いてもらい上手に発散する方法などがあります。日頃からストレスが発散できるよう、趣味や生きがいとなるものを持つことや、なにかと協力してもらえる人間関係も重要となります。

自分自身でできる対処行動として大切なのは、まずストレスを受けている自分に気づく(気づいてもらう)ことです。そしてそのストレス反応が頭痛・動悸・不眠・飲酒増加・ヒヤリハットであることを知っておくことが有効です。もし自分や周囲の人が不安やイライラ、活気の低下、興味関心の低下にとらわれていることに気づいたら、その状態を責めることなくネガティブな感情から立ち戻り、最も大切な生きがいに沿って行動すること、意識的に周囲の人に親切にすること、呼吸法や瞑想、マインドフルネスなどネガティブな感情を和らげる方法をみんなで試してみましょう。時間をかけても練習する価値のある、あの世界保健機関WHOお墨付きの方法です!

質問者様は眠れず困っておられるようですね。睡眠も質と時間が重要です。まずは飲酒や夜のスマホなどを控えて、ストレッチやヨガなど適度な運動やリラクゼーションで睡眠の質を上げてみませんか?十分な睡眠がストレスからの回復には重要です。人にもよるようですが、個人的には3時間程度の仮眠ではなく、6、7時間程度の十分な睡眠時間をお勧めしています。作業の効率や気分にも良い影響がみられますよ。繰り返しになりますが、自分で対応しきれないときは決して無理をせず周囲の人たちの協力も仰いで、よりよい解決の糸口を目指しましょう。窮地に陥った時に相談できる人を持ち、適切なケアを適切なタイミングで受けることは我々が健康で効果的な社会活動を続けるために極めて重要です。

ストレスは、私たちが生きていく上で避けることのできないものですが、うまく対応することができれば自分や組織の成長にもつながります。気づきと工夫、思いやりは我々が人生を豊かに送る助けになります。みんなでこのストレスフルな現代社会を乗り切ってゆきましょう!
当院内科外来は専門医療機関とも連携しながら介護と医療を融合して、地域の皆様の健康生活をサポートいたします。お気軽にご相談ください。(金崇豪)

 

◇厚生労働省 こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
HOME>ストレス軽減ノウハウ
https://kokoro.mhlw.go.jp/nowhow/nh001/
◇Doing What Matters in Times of Stress: World Health Organization
https://www.who.int/publications-detail/9789240003927
◇睡眠時間が翌日終日の認知・運動機能に与える影響
ITヘルスケア 2008 年 3 巻 2 号 p. 96-105

コーヒーは健康飲料と聞きましたが一家全員お茶党です

Q:テレビや雑誌でコーヒーは健康飲料と聞きましたが一家全員お茶党です、かぜ以外では滅多に病院にお世話にならない私はコーヒーに乗り換えるべきでしょうか?(40歳女性)

A:結論から申し上げます。乗り換える必要はありません、お茶を楽しんでください。

今回はコーヒーについて調べてみました。日本にコーヒー豆が渡ったのは16世紀から17世紀。オランドとポルトガルから渡ったその飲み物は、当時の日本人には「焦げ臭くて苦く飲めやしない」ものでした。19世紀後半になって日本で初めての喫茶店ができ、知識人や文化人の交流の場となりました。経営安定のために月額50銭の「サブスク」が導入され、西洋建築2階建ての店内では食事や喫煙の共にコーヒーが供されていたました。大正時代に入ると、喫茶店には女給がサービスに就く特殊飲食店と、軽食やコーヒーを楽しむ純喫茶とにわかれました。前者は銀座や新宿、後者は神田や神保町と現代の街のテイストにも受け継がれていると思いませんか?

そんな喫茶店で淹れる飲み物、コーヒーは「大人の飲み物」の代表です。昔は「こら、カフェインは体に悪いからダメ!!」などと叱られながら、少しすすったミルクコーヒーの「背伸びした」味を思い出します。20年程前からコーヒーの健康への影響は大幅に見直されました。糖尿病や肝臓病さらには各種悪性腫瘍(がん)にまで健康増進の効果が認められています。折り紙付きの健康飲料としてコーヒーは医療関係者の中でも歓迎されています。その内クリニックの外来で処方するようになるなんて言う冗談を言う方もいらっしゃいますよ。

コーヒーに豊富に含まれるポリフェノール等の抗酸化作用が健康効果が強く、カフェインやアクリルアミドの含有量は1日4杯程度の量であれば気にする必要は無い様です。また、コーヒーの成分は口腔内や腸内の細菌叢の菌数や構成にも影響を与えており健康効果の研究がさらに進められています。

質問者様のように心臓や血圧、胃腸に大きな問題がない方は健康効果を期待してコーヒーを楽しんでみてはいかがでしょうか?繰り返しになりますが、お茶党の方は緑茶にも健康効果が見られるので、無理にコーヒーに変える必要はありませんよ。そして付け合わせを工夫してお砂糖や小麦は控えめに!

 

診療所では内視鏡検査や定期康診断など予防医療にも力を入れています。窓口や電話でのご相談やホームページをご参照ください。

 

啓和会は「医療」「介護」「福祉」の一貫した地域包括ケアで地域の方々の生活の質の向上を目指します。

 

◇旦部幸博 コーヒーの科学「おいしさ」はどこで生まれるのか?

◇history of coffee in japan https://en.goodcoffee.me/column/guest-columnist/history-of-coffee-in-japan/

健康診断で肝臓が悪いといわれ続けています

Q : 以前から健康診断で肝臓が悪いといわれ続けています。以前にお世話になった病院で脂肪肝といわれましたが薬はもらえませんでした。飲酒習慣はありませんが仕事が忙しく病院受診はつい後回しになってしまいます。健康のためにはどういうことに気を付ければよいのでしょうか?(34歳男性)

A:お忙しい中ご質問ありがとうございます!定期健診や人間ドックは受けただけではもったいない。健康診断の結果はぜひ活用しましょう。
肥満や高脂血症、血糖異常の合併に注意した生活習慣の改善と内科受診の組み合わせが健康生活の「肝(きも)」です。
職場などで定期的に行う健康診断は生活習慣病の項目もカバーしており、肝臓が悪い=肝機能障害の所見は受診者の15%以上、つまり6-7人に1人の方に見られます。飲酒の頻度は世代の流れでだんだん減っている中、アルコール以外の生活習慣を背景にした肝障害への対応はますます注目されています。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)における肥満・生活習慣病合併の状況は性別年齢ごとの特徴があります。若い男性ではコレステロール異常(脂質異常症)、若い女性では高度肥満が多く、更年期以降の女性では2型糖尿病の合併が見られます。一方、肥満はメタボリックシンドロームの最も主要な症候であり、その肝臓病変であるNAFLD/NASHにおいても、肥満が最も重要な危険因子とされます。
専門的な指標での肥満とNAFLD/NASHの合併率について、ボディマス指数(BMI)23以下では10%、BMI 30以上の高度肥満者では80%といわれますが、アジア人は軽度の肥満でも臓器障害が強く表れるといわれ、さらに注意が必要です。

では何に気を付けたらよいのでしょうか?そのヒントは腸と肝臓の連関にあります。高脂肪食の摂取、急性腸炎、抗生物質の投与等により腸内細菌叢が乱れ、腸管透過性が亢進して血中のlipopolysaccharide(LPS)濃度が上昇する代謝性エンドトキシン症が生じて腸管から門脈を通して肝臓へ流入し、炎症を惹起し遷延を誘導することが分かってきました。カロリー計算だけのダイエットでなく、精製した炭水化物中心の高エネルギー低栄養の食事からビタミンや繊維の豊富な低エネルギー高栄養の食事に切り替えることも考えてゆきましょう。

果糖(フルクトース)は、体内では、エネルギー源となったり、ブドウ糖に変換されたり、トリグリセリド(中性脂肪)の材料になる。果糖は筋肉や肝臓で代謝される。フルクトースの取りすぎは高脂血症の原因となったり前述の腸管連関を通じて肝の繊維化等を来たしたりするため、果糖ブドウ糖液糖と表示のある甘い飲料水の取りすぎにも注意が必要です。

健康診断で指摘された肝障害は放置せず、早めの生活習慣の改善を含めてご相談ください。啓和会は介護と医療の融合で地域の皆様の健康生活を支えます。(金 崇豪)

◇厚生労働省「定期健康診断調」
◇特集 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)の最新知見 日本内科学会雑誌109: 2020
◇果糖の代謝 – fc2web.com 最終検索2月16日2020年
hobab.fc2web.com/sub4-Fructose_Metabolism.htm

日差しが強く、日焼けやシミが気になります

Q : 近頃日差しが強く、日焼けやシミが気になります。自分か子供のころは太陽にあたることは健康にいいと習ったため今も太陽にあたるようにしています。合っていますよね?(49歳女性)

A : 今年も夏は暑かったですね。
気候の変化は海の生物にも顕著に出ているようで、釣り好きの知り合いからは海藻や魚の数や種類など、ずいぶん前から変わってきていると聞きます。日光に当たるのは気持ちがよいものです!!そして同時に、お肌のケアも大事ですよね。

日光の健康への影響として代表的なのは活性化ビタミンDの合成です。骨粗鬆症だけでなく、健康のバロメーターとしても近年取り上げられてきています。一方で、日光に当たりすぎると熱中症やひどい日焼けを起こしたり、時間がたってから白内障や皮膚がんの原因となったりすると言われています。

つまり、適度な日光は体に良いと言えます。また、日光への感受性は複数の遺伝的要素が絡んでいます。日光が苦手な方もしくは、日中の外出が難しい方は無理をなさらず他の方法でビタミンDを接種していただければよいでしょう。
ある日本の報告によると、夏の日光は冬に比べて2倍程度のビタミンDの合成能力があるようです。夏の暑い時期、長時間の屋外作業やレジャーなどの際には日焼け止めを。そして、ビタミン補充のためにも緑黄色野菜などを取り入れ、偏りすぎない食習慣で紫外線と上手に付き合ってゆくことができるでしょう。

秋は運動会、屋外作業やレジャーの季節です。木陰での休憩などをはさみながら、太陽の恵みを存分に体に活かしてゆきましょう!環境問題が取り上げられて久しい昨今。日焼け、紫外線について気になることも多いかと思います。お肌のトラブルだけでなく生活の中で困ったことやわからないことや気になることがありませんか?医療と介護が融合する啓和会では、そんなみなさまのお越しをスタッフ一同心よりお待ちしております。

◇日光照射とビタミンDの栄養について; 小林 正 衛生科学, 1985, vol.31(3)p.156-170.
◇Effects of Ultraviolet Radiation on Human Health; MacKie R.M. et al, Radiation Protection Dosimetry, 2000, Vol.91, 1-3, p15–18.
◇ Occupational Exposures to Solar Ultraviolet Radiation of Vineyard Workers in Tuscany (Italy): Anna Maria Siani et al, 2011, Photochemistry and photobiology, vol 87(4).

吐き気をもよおすことが多くなりました

Q : 何かにつけて吐き気をもよおすことが多くなりました。好きなとんこつスープの臭いもダメな時があります(41歳男性)

A : まさかの二日酔い?なんてことはありませんよね。大好きなラーメンの匂いなのに吐き気を催してしまう、つらいですよね。吐き気の原因と仕組みについて少し見てみましょう。
吐き気とは嘔吐の前兆で、多様な原因で起こります。よくある原因としては、薬剤、心臓病、筋、頭痛、筋肉や骨の痛み、胃炎や膵炎、てんかん、妊娠や空腹などなど。実に多様です。男性よりは女性に多くみられ、人種差があるようで米国人の間ではアジア系の人に多いという報告もあります。

吐き気は、不安やイライラなどの気分の移り変わりを背景に、大脳や小脳などの中枢神経と自律神経、知覚神経などの末梢神経、さらに胃腸の運動や内分泌(ホルモン)を含んだシステムで引き起こされます。吐き気を伝える働きを持つのは、セロトニン/ドパミン、ヒスタミン/アセチルコリンなどの神経伝達物質であり、これらの作用が吐き気止めの薬理作用に応用されています。

実際に、不安を抑えるお薬から、吐き気の伝達過程に作用するお薬までさまざまなお薬が吐き気止めに使われます。そして、急性期の吐き気、慢性期の吐き気を比べると慢性期の吐き気のほうが対応に難渋します。また、東洋医学のツボが吐き気に効果があるとされ、最近の科学的研究でその効果が証明されてきています。いくつか紹介しますと、薬指の爪の付け根(関衝)、手首の付け根(内関)、手のひらの中央のくぼみ(労宮)、人差し指の根元の手のひらの骨の中間にある圧痛店(合谷)などのツボがあります。ぜひお試しください。

ご質問者様、日頃の疲れやストレスが溜まっていませんか?吐き気の背景には心や気分の状態と、様々な病気の可能性があります。まずは生活を見直しましょう。吐き気でお悩みの場合、また症状が長く続く場合は、内科や消化器内科へご相談ください。

当院内科外来は川崎小田地区でプライマリケアとして専門科の先生とも連携しながら地域のみなさまの様々な「困った」に対応しております。(金 崇豪)

◇latte column 健康サイト https://latte.la/column/45011246
◇Prashant Singh et al. Nausea: a review of pathophysiology and therapeutics Therap Adv Gastroenterol. 2016 Jan; 9(1): 98–112.

お風呂上りでもないのに、ほてりが止まりません

Q : お風呂上りでもないのに、顔や頭がほてることが増えました。めまいっぽい時もあります。(53歳女性)

A : カッカとほてる顔や頭、クーラーを最強にして頭から氷をかぶりたい。周りは涼しい顔をしているのに自分だけ。目に浮かびます。
ほてりとは一般的に異常な熱感のことをいい、発汗を伴うこともあります。それが胸、頭や顔に起こるとのぼせといいます。緊張したり恥ずかしい思いをしたりしたときに一過性にあらわれることが多いですが、自律神経調節の乱れや更年期障害などによって、ほてりが続く場合もあります。

いつもと違うほてりを感じたらまずしたいこと!それは、体温測定です。
ほてりの原因にインフルエンザや風邪などの急性熱性疾患や熱中症などの体温調整異常があります。もし体温が高ければ氷枕やアイスノンで冷却し、水分補給をしましょう。症状を見ながら市販薬や受診を考える必要があります。一方、日焼けや自律神経調整の乱れ、更年期障害や高血圧症などでは、体温がそれほど高くないのにほてり・のぼせを感じることがあります。

日常生活での対策では、外出時の日焼け止め、自律神経を整える作用のあるビタミンC、A、Eやカルシウムの摂取と、ストレスをため込みすぎない生活習慣を心がけましょう。食材では果物や緑黄色野菜、ナッツやヨーグルト、お豆腐などをお食事やおやつに取り入れながら、適度な運動や趣味に打ち込んでみてはいかがでしょう?

さて、質問者様は53歳女性。ほてりやのぼせの原因で多いのは更年期障害です。症状の強さは個人差がありますが、喫煙や肥満とも関連があり、有症状期間は7年や10年続くこともあるようです。夜間にほてりや発汗がひどく不眠に至ることもあるため悩まされる方も多いようです。おタバコや食事などの生活習慣の見直し、リラックスして涼しく過ごす工夫を心がけましょう。また、近年では更年期障害とほてり、不眠、気分の落ち込み、冠動脈疾患の関連が研究で話題になり、積極的な治療の対象として捉えなおされています。ほてりの症状があまりにひどい場合、特に夜眠れないような場合はぜひ、プライマリケアの当院内科へご相談にお越しください。専門科の先生とも連携しながら対応してまいります。お待ちしております!

◇ほてり タケダ健康サイト
https://takeda-kenko.jp/navi/navi.php?key=hoteri_kao
◇Hot flashes Mayo Clinic Patient Care & Health Information
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/hot-flashes/symptoms-causes/syc-20352790
◇ E.Bonnani et al., Insomnia and hot flashes: Maturitas, 126(2019), 51-54

耳鳴りで眠れない時もあります

Q :  最近、耳鳴りが多く眠れない時もあります。飛行機に乗っているときのような高い音です(56歳男性)

A : 耳鳴りで眠れないのはつらいですね、眠れなかったり仕事に集中できなかったり。耳鳴りは悩みの種です。56歳の働き盛り、このコラムがセカンドライフを満喫する準備の一助になれば幸いです。
まず、一過性のものなら心配無用です。突然の耳鳴りがすぐおさまれば心配いりません。症状が長引いたとき、体の症状を伴う場合は相談・受診をしましょう。意識障害、頭痛、椅子にも座れなかったり手足が動かなかったりするときは、すぐに医療機関を受診しましょう。
さて、耳鳴りの原因です。多いのは年齢・騒音・内耳(鼓膜の内側)の異常があげられます。時にはメニエール病、顎・頭・首のケガ、耳管の異常などによっておこることもあります。また、音の高・低から連続・不連続、主観的・客観的といった性質により原因を推察することもできます。例えば高血圧や動脈硬化により、低音で拍動性の耳鳴りが客観的にも聞こえることがあります。お薬ではポリミキシンBやエリスロマイシン、バンコマイシンなどの抗生剤、利尿剤、いくつかの抗うつ薬や抗がん剤なども原因となります。
脱水、騒音、年齢、男性、喫煙、高血圧や動脈硬化が耳鳴りの増悪因子です。合併症として疲れ、ストレス、睡眠障害、記憶障害、抑うつ、不安・緊張などが悪くなることがあります。休みの日は煙草を片手に水も飲まずに長時間パチンコなんて生活はあまり感心できません。ご家族・同僚といっしょに生活を見直して改善するチャンスにしましょう!
また、最近の研究によると、瞑想のようなマインドフルネスに基づく教育プログラムもあり、耳鳴りとそれに伴う症状にある程度の効果があるようです。
当院では、内科外来から専門科クリニックや総合病院の先生と連携しております!お気軽にご相談ください。

◇耳鳴りとめまい トヨタ記念病院 ホームページ
https://www.toyota-mh.jp/kenkou/miminari.php
◇Tinnitus Mayo Clinic Patient Care & Health Information
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/tinnitus/symptoms-causes/syc-20350156

主人のいびきが、最近ひどくなりました

Q : 主人のいびきが、最近ひどくなりました。以前はお酒を飲んだ時くらいだったので心配です。薬で治療できますか。(37歳女性)

A:いびきがひどくて、別の部屋で寝てもらっていても母子そろって熟睡できない!でも、本人はぐっすり気づいていないのではないか。。。そんな心配・お悩みありますよね?
いびきには大きく分けて単純性いびきと睡眠時無呼吸症候群を伴ういびきの2種類があります。生活習慣病のリスクにもなるため、生活の中での対策はもちろん、必要な時には検査と治療をおすすめします。
いびきは寝ているときに空気の通り道が狭くなって起こります。慢性的なアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、扁桃炎、鼻の真ん中の骨が曲がっている鼻中隔彎曲症、口蓋垂(のどちんこ)が大きい場合などがあります。放置しておくと、いびきが悪化すると共に睡眠時無呼吸症候群の原因となります。
医学上は10秒以上の気流停止を無呼吸といい、一晩(7時間)の睡眠中に30回以上無呼吸が認められる場合、あるいは1時間に5回以上無呼吸がある場合に睡眠時無呼吸症候群としています。睡眠中の出来事であるため自分で気がつくことは稀で、潜在患者数は300万人もいると推計されています。21世紀の国民病といわれることもあります。治療法が確立されているため、適切に検査・治療を行えば決して恐い病気ではありませんが、放っておくと高血圧、糖尿病などの生活習慣病や心臓・脳血管障害などにつながるリスクがあります。

いきなり病院はハードルが高い!そんな場合はまず適正な体重を維持する、枕を変える、マウスピースを使うなどの対応が良いでしょう。本人にいびきの自覚がなくても、眠りの質は低下するため、朝の頭痛やだるさ、日中の眠気、運転中の眠気、朝の血圧が高く降圧剤が効きにくいなどの症状がみられる場合もあります。ビデオを撮影して症状(被害?)の深刻さを自覚してもらうという荒療治をされる猛者も。
ある報告によると、男性・加齢・首周りの肉付きが睡眠時無呼吸の程度の増悪因子といわれていますが、ご主人の体形でお気づきのところありませんか?
治療は歯科ではマウスピース、医科では減量のサポートと生活習慣病などの併存疾患の治療、そしてマスクによる持続陽圧呼吸療法CPAPや、扁桃腫大が原因の場合の外科的治療、など色々なアプローチがあります。

いびきに始まる睡眠時無呼吸症候群はとても身近な病気です。当院では歯科・内科外来で専門科と連携しながら診療にあたっております。ぜひ気軽にご相談ください。(金 崇豪)

 

◇睡眠時無呼吸症候群の治療 監修医院 にしかわ耳鼻咽喉科
https: www.nisikawa-mimi.com/sas/noisy/
◇一般社団法人 日本呼吸器学会ホームページ 呼吸器Q&A 夜、いびきをかくといわれました
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=61
◇Robert J O Davies et al. The epidemiology of sleeping apnoea. Thorax 1996;51:(Suppl 2):S65-S70 ◇Chapter 2 – Epidemiology of insufficient sleep and poor sleep quality. Sleep and Health
2019, Pages 11-20

1年で52キロから47キロに痩せてしまいました

Q : よく食べる方ですが、1年で52キロから47キロに痩せてしまい心配です。どんなことに気を付けたらよいでしょうか?健康診断は特に問題ありません。(47歳女性)

A : 健康に気を使っているのにやせてしまう!気がかりな中、ご質問ありがとうございます。「痩せ」いわゆる体重減少は、6か月で5%以上の減少があると臨床的にも問題とされます。よくある病気では甲状腺機能亢進症、糖尿病、うつ病、認知症や時に悪性腫瘍も鑑別に挙げることがあり時に段階的な検査と合わせて慎重な経過観察が必要です。47歳とお若く、52㎏からの体重減少は1年で5キロ。12か月でおよそ10%。問題となるレベルかどうかが難しいところです。もともと「肥満」ではなかった方の「痩せ」を外来で拝見した場合には発熱やエネルギーの消費量が増大するような疾患がなければ、次にエネルギー摂取不足を来す疾患を考慮して検査を進めてゆきます。大まかに、内分泌疾患、消化器疾患、感染症、心不全、腎不全、神経疾患、非感染性炎症疾患、悪性腫瘍、精神科疾患、アルコール、麻薬や覚醒剤などの薬剤性と幅広い鑑別をあげながら、各専門科と連携し、1か月から6か月程度の間隔で時間をかけて診療させていただくと思います。

しかしながらちょっと気になるのがご質問者様の性別とご年齢です。47歳、女性。もしかして更年期? ホルモンバランスが乱れると自律神経のバランスも乱れて、ただでさえ心身の状態は不安定になりがちです。加えて、家庭や人間関係、老後への不安、親の介護、子どもの教育、仕事など健康面や将来に対しての心配ごとが増えていく。更年期のお年頃は環境的な問題からもストレスを抱えやすい時期です。

一般的には、若い頃は多かった筋肉量も年齢とともに減ってしまい、若い頃と同じような食事を続けてしまい太りやすくなるというわけです。また、女性ホルモン(エストロゲン)も体重の増加に関係しております。排卵や月経に適した身体づくりのほか、脂肪の代謝を促すエストロゲンが、閉経を迎えて分泌量が減り、内臓脂肪がたまりやすくなります。

逆に!質問者様のように更年期になると、痩せてしまう人もいます。その理由は、胃の粘膜や腸の蠕動運動など消化器のはたらきが落ちて、食欲不振になり食事摂取量が低下していることも考えられます。併せて、自律神経のはたらきが乱れてしまうことが影響しているかもしれません。

ところで、肥満と痩せのどちらが健康によいのでしょうか?一般に中年以降の肥満は男女ともに慢性疾患のリスクを上げ、健康寿命の短縮につながることが分かっています。中年以降には肥満を避けて、筋力を保ちながら若いころの体重を維持することが賢明です。そこで健康的な痩せ方のポイントとなる、運動と食生活についてご紹介いたしましょう。

まずは、定期的な運動から!少し息が上がる程度の有酸素運動がお勧めです。ウォーキングでは腕を振りながら歩くと全身運動になり、筋肉にほどよい刺激を与えながら、全身を引き締めることができます。寒い季節や屋外の運動が不安な方は、転倒に気を付けながら踏み台昇降など自宅で行うこともできます。1週に150分程度の運動を目安に、脂肪を燃やしましょう!また、ある研究によると先生に倣いながら運動をすると短期間で効果的に筋力がアップするようです。

食生活において、無理な食事制限は禁物。続けられる範囲でよいので、タンパク質、繊維、ビタミンを豊富に含んだ様々な食材をバランスよく食べましょう!また、食べる順番もダイエットには効果的です。おかずから食べ始めましょう。脂肪や炭水化物を身体が吸収しにくくなり、血糖値の急な上昇を防げます。たとえば、食物繊維が豊富なごぼうやキャベツ、きのこ類をよく噛んで食べたら次に、お肉や魚などの主菜を食べ、最後にご飯やパンなどの主食を食べます。ゆっくりよく噛んで食べると糖質の摂りすぎや吸収を抑えられます。加えて、更年期世代の女性には植物性の女性ホルモン類似物質である大豆イソフラボンの効果も含めて、大豆はお勧めです!食事のコントロールと合わせてイソフラボンを摂取することで効果的なダイエットにつながるかもしれません。

いずれにしても、自分だけで悩みすぎないよう、周囲に理解を求め、専門家に相談できることも覚えておいてくださいね。運動やお食事についてはお近くのトレーナーや栄養士さんなどにご相談されてはいかがでしょう?

私ども啓和会も医療と介護の融合で地域のみなさんの健康な生活をサポートいたします。ぜひご相談ください。(金崇豪)

 

参考文献
◇中澤一弘 やせ 今日の臨床サポート https://clinicalsup.jp
◇Yang Zheng Associations of weight gain from early to middle adulthood with major health outcomes later in life JAMA.2017; 318(3): 255-69.
◇Molly B. Conroy Effectiveness of a physical activity and weight loss intervention for middle aged women: healthy bodies, healthy hearts randomized trial J Gen Intern Med.2014; 30(2): 207-13.
◇更年期・閉経後は痩せる 更年期で痩せる人・太る人とその原因 イソフラボン倶楽部 http://isoflavone.jp/column/

「男性の更年期障害」ってあるんですか?

Q : ストレスのせいかイライラすることが多く、妻や娘とも言い争うことも増えました。「男性の更年期障害」ってあるんですか? (49歳男性)

A:日頃からつのるイライラやつらい思い。でもおれは男、泣きとおすなんてできないよ。でも夜も眠れず寝汗でつらいし、なんだか不安で疲れやすい。外来にこんな方がいらっしゃると、日頃は漢方薬の出番。でも質問者様のおっしゃる通り、ストレスに対する反応に加えて、そのイライラ、男性ホルモンの減少が影響しているかもしれません。

医学上は加齢男性性腺機能低下症候群と呼ばれる、いわゆる「男性の更年期障害」は日本でも十数年前から知られるようになっており、2007年には日本泌尿器科学会、日本Men’s Health医学会公認で診療の手引きが発行され、その診療に際する最初のガイドラインが示されました。40代後半から60代でうつ病やメタボリックシンドローム、高脂血症や脳・心血管病変などのリスクとしても注目されています。

症状としてはのばせ・多汗、全身倦怠感、筋肉や関節の痛み、筋力低下、骨密度低下、頭痛・めまい・耳嶋、頻尿など。併せて、不眠、無気力、イライラ、性欲減退、集中力や記憶力の低下などとともにうつ症状が出る場合もあり、「男性の更年期障害」は、女性更年期障害とよく似た多様な症状が見られます。

週末は夜更かししてテレビを見ながらビールを飲んでお菓子をつまむ。日曜日は一日中横になって過ごしたりしていませんか?予防のためには生活習慣の改善が一番。適度な運動とバランスのとれた食生活が効果的です。筋肉を使うことでテストステロンが増え、ストレス解消にもなります。週150分程度のウォーキングやスロージョギングでメリハリをつけましょう。食事ではニンニク、タマネギなどのネギ類や、ヤマイモなどのネバネバ食品がおすすめです。また、良質な睡眠も大切。生活に張り合いが出るような趣味や生きがいを持ち、ストレスを解消しましょう。

それでも困った時は、当院内科へぜひご相談ください。漢方薬を中心として治療を考えることが出来るかもしれません。専門的な治療には泌尿器科や心療内科・精神科などスペシャリストの先生への紹介も含めて対応させていただきます。
(金崇豪)

 

参考文献
◇井手 久満 男性更年期障害(LOH症候群) 医療法人社団こころとからだの元気プラザhttps://www.genkiplaza.or.jp
◇石内裕人 第30回男性更年期の冷えと漢方治療 Kampo Square https://www.kampo-s.jp
◇岩本 晃明ら 日本人成人男子の総テストステロロン、遊離テストステロンの基準値の設定 日泌尿会誌.,95(6),p751-,2004.