吐き気をもよおすことが多くなりました

Q : 何かにつけて吐き気をもよおすことが多くなりました。好きなとんこつスープの臭いもダメな時があります(41歳男性)

A : まさかの二日酔い?なんてことはありませんよね。大好きなラーメンの匂いなのに吐き気を催してしまう、つらいですよね。吐き気の原因と仕組みについて少し見てみましょう。
吐き気とは嘔吐の前兆で、多様な原因で起こります。よくある原因としては、薬剤、心臓病、筋、頭痛、筋肉や骨の痛み、胃炎や膵炎、てんかん、妊娠や空腹などなど。実に多様です。男性よりは女性に多くみられ、人種差があるようで米国人の間ではアジア系の人に多いという報告もあります。

吐き気は、不安やイライラなどの気分の移り変わりを背景に、大脳や小脳などの中枢神経と自律神経、知覚神経などの末梢神経、さらに胃腸の運動や内分泌(ホルモン)を含んだシステムで引き起こされます。吐き気を伝える働きを持つのは、セロトニン/ドパミン、ヒスタミン/アセチルコリンなどの神経伝達物質であり、これらの作用が吐き気止めの薬理作用に応用されています。

実際に、不安を抑えるお薬から、吐き気の伝達過程に作用するお薬までさまざまなお薬が吐き気止めに使われます。そして、急性期の吐き気、慢性期の吐き気を比べると慢性期の吐き気のほうが対応に難渋します。また、東洋医学のツボが吐き気に効果があるとされ、最近の科学的研究でその効果が証明されてきています。いくつか紹介しますと、薬指の爪の付け根(関衝)、手首の付け根(内関)、手のひらの中央のくぼみ(労宮)、人差し指の根元の手のひらの骨の中間にある圧痛店(合谷)などのツボがあります。ぜひお試しください。

ご質問者様、日頃の疲れやストレスが溜まっていませんか?吐き気の背景には心や気分の状態と、様々な病気の可能性があります。まずは生活を見直しましょう。吐き気でお悩みの場合、また症状が長く続く場合は、内科や消化器内科へご相談ください。

当院内科外来は川崎小田地区でプライマリケアとして専門科の先生とも連携しながら地域のみなさまの様々な「困った」に対応しております。(金 崇豪)

◇latte column 健康サイト https://latte.la/column/45011246
◇Prashant Singh et al. Nausea: a review of pathophysiology and therapeutics Therap Adv Gastroenterol. 2016 Jan; 9(1): 98–112.

お風呂上りでもないのに、ほてりが止まりません

Q : お風呂上りでもないのに、顔や頭がほてることが増えました。めまいっぽい時もあります。(53歳女性)

A : カッカとほてる顔や頭、クーラーを最強にして頭から氷をかぶりたい。周りは涼しい顔をしているのに自分だけ。目に浮かびます。
ほてりとは一般的に異常な熱感のことをいい、発汗を伴うこともあります。それが胸、頭や顔に起こるとのぼせといいます。緊張したり恥ずかしい思いをしたりしたときに一過性にあらわれることが多いですが、自律神経調節の乱れや更年期障害などによって、ほてりが続く場合もあります。

いつもと違うほてりを感じたらまずしたいこと!それは、体温測定です。
ほてりの原因にインフルエンザや風邪などの急性熱性疾患や熱中症などの体温調整異常があります。もし体温が高ければ氷枕やアイスノンで冷却し、水分補給をしましょう。症状を見ながら市販薬や受診を考える必要があります。一方、日焼けや自律神経調整の乱れ、更年期障害や高血圧症などでは、体温がそれほど高くないのにほてり・のぼせを感じることがあります。

日常生活での対策では、外出時の日焼け止め、自律神経を整える作用のあるビタミンC、A、Eやカルシウムの摂取と、ストレスをため込みすぎない生活習慣を心がけましょう。食材では果物や緑黄色野菜、ナッツやヨーグルト、お豆腐などをお食事やおやつに取り入れながら、適度な運動や趣味に打ち込んでみてはいかがでしょう?

さて、質問者様は53歳女性。ほてりやのぼせの原因で多いのは更年期障害です。症状の強さは個人差がありますが、喫煙や肥満とも関連があり、有症状期間は7年や10年続くこともあるようです。夜間にほてりや発汗がひどく不眠に至ることもあるため悩まされる方も多いようです。おタバコや食事などの生活習慣の見直し、リラックスして涼しく過ごす工夫を心がけましょう。また、近年では更年期障害とほてり、不眠、気分の落ち込み、冠動脈疾患の関連が研究で話題になり、積極的な治療の対象として捉えなおされています。ほてりの症状があまりにひどい場合、特に夜眠れないような場合はぜひ、プライマリケアの当院内科へご相談にお越しください。専門科の先生とも連携しながら対応してまいります。お待ちしております!

◇ほてり タケダ健康サイト
https://takeda-kenko.jp/navi/navi.php?key=hoteri_kao
◇Hot flashes Mayo Clinic Patient Care & Health Information
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/hot-flashes/symptoms-causes/syc-20352790
◇ E.Bonnani et al., Insomnia and hot flashes: Maturitas, 126(2019), 51-54

耳鳴りで眠れない時もあります

Q :  最近、耳鳴りが多く眠れない時もあります。飛行機に乗っているときのような高い音です(56歳男性)

A : 耳鳴りで眠れないのはつらいですね、眠れなかったり仕事に集中できなかったり。耳鳴りは悩みの種です。56歳の働き盛り、このコラムがセカンドライフを満喫する準備の一助になれば幸いです。
まず、一過性のものなら心配無用です。突然の耳鳴りがすぐおさまれば心配いりません。症状が長引いたとき、体の症状を伴う場合は相談・受診をしましょう。意識障害、頭痛、椅子にも座れなかったり手足が動かなかったりするときは、すぐに医療機関を受診しましょう。
さて、耳鳴りの原因です。多いのは年齢・騒音・内耳(鼓膜の内側)の異常があげられます。時にはメニエール病、顎・頭・首のケガ、耳管の異常などによっておこることもあります。また、音の高・低から連続・不連続、主観的・客観的といった性質により原因を推察することもできます。例えば高血圧や動脈硬化により、低音で拍動性の耳鳴りが客観的にも聞こえることがあります。お薬ではポリミキシンBやエリスロマイシン、バンコマイシンなどの抗生剤、利尿剤、いくつかの抗うつ薬や抗がん剤なども原因となります。
脱水、騒音、年齢、男性、喫煙、高血圧や動脈硬化が耳鳴りの増悪因子です。合併症として疲れ、ストレス、睡眠障害、記憶障害、抑うつ、不安・緊張などが悪くなることがあります。休みの日は煙草を片手に水も飲まずに長時間パチンコなんて生活はあまり感心できません。ご家族・同僚といっしょに生活を見直して改善するチャンスにしましょう!
また、最近の研究によると、瞑想のようなマインドフルネスに基づく教育プログラムもあり、耳鳴りとそれに伴う症状にある程度の効果があるようです。
当院では、内科外来から専門科クリニックや総合病院の先生と連携しております!お気軽にご相談ください。

◇耳鳴りとめまい トヨタ記念病院 ホームページ
https://www.toyota-mh.jp/kenkou/miminari.php
◇Tinnitus Mayo Clinic Patient Care & Health Information
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/tinnitus/symptoms-causes/syc-20350156

主人のいびきが、最近ひどくなりました

Q : 主人のいびきが、最近ひどくなりました。以前はお酒を飲んだ時くらいだったので心配です。薬で治療できますか。(37歳女性)

A:いびきがひどくて、別の部屋で寝てもらっていても母子そろって熟睡できない!でも、本人はぐっすり気づいていないのではないか。。。そんな心配・お悩みありますよね?
いびきには大きく分けて単純性いびきと睡眠時無呼吸症候群を伴ういびきの2種類があります。生活習慣病のリスクにもなるため、生活の中での対策はもちろん、必要な時には検査と治療をおすすめします。
いびきは寝ているときに空気の通り道が狭くなって起こります。慢性的なアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、扁桃炎、鼻の真ん中の骨が曲がっている鼻中隔彎曲症、口蓋垂(のどちんこ)が大きい場合などがあります。放置しておくと、いびきが悪化すると共に睡眠時無呼吸症候群の原因となります。
医学上は10秒以上の気流停止を無呼吸といい、一晩(7時間)の睡眠中に30回以上無呼吸が認められる場合、あるいは1時間に5回以上無呼吸がある場合に睡眠時無呼吸症候群としています。睡眠中の出来事であるため自分で気がつくことは稀で、潜在患者数は300万人もいると推計されています。21世紀の国民病といわれることもあります。治療法が確立されているため、適切に検査・治療を行えば決して恐い病気ではありませんが、放っておくと高血圧、糖尿病などの生活習慣病や心臓・脳血管障害などにつながるリスクがあります。

いきなり病院はハードルが高い!そんな場合はまず適正な体重を維持する、枕を変える、マウスピースを使うなどの対応が良いでしょう。本人にいびきの自覚がなくても、眠りの質は低下するため、朝の頭痛やだるさ、日中の眠気、運転中の眠気、朝の血圧が高く降圧剤が効きにくいなどの症状がみられる場合もあります。ビデオを撮影して症状(被害?)の深刻さを自覚してもらうという荒療治をされる猛者も。
ある報告によると、男性・加齢・首周りの肉付きが睡眠時無呼吸の程度の増悪因子といわれていますが、ご主人の体形でお気づきのところありませんか?
治療は歯科ではマウスピース、医科では減量のサポートと生活習慣病などの併存疾患の治療、そしてマスクによる持続陽圧呼吸療法CPAPや、扁桃腫大が原因の場合の外科的治療、など色々なアプローチがあります。

いびきに始まる睡眠時無呼吸症候群はとても身近な病気です。当院では歯科・内科外来で専門科と連携しながら診療にあたっております。ぜひ気軽にご相談ください。(金 崇豪)

 

◇睡眠時無呼吸症候群の治療 監修医院 にしかわ耳鼻咽喉科
https: www.nisikawa-mimi.com/sas/noisy/
◇一般社団法人 日本呼吸器学会ホームページ 呼吸器Q&A 夜、いびきをかくといわれました
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=61
◇Robert J O Davies et al. The epidemiology of sleeping apnoea. Thorax 1996;51:(Suppl 2):S65-S70 ◇Chapter 2 – Epidemiology of insufficient sleep and poor sleep quality. Sleep and Health
2019, Pages 11-20

1年で52キロから47キロに痩せてしまいました

Q : よく食べる方ですが、1年で52キロから47キロに痩せてしまい心配です。どんなことに気を付けたらよいでしょうか?健康診断は特に問題ありません。(47歳女性)

A : 健康に気を使っているのにやせてしまう!気がかりな中、ご質問ありがとうございます。「痩せ」いわゆる体重減少は、6か月で5%以上の減少があると臨床的にも問題とされます。よくある病気では甲状腺機能亢進症、糖尿病、うつ病、認知症や時に悪性腫瘍も鑑別に挙げることがあり時に段階的な検査と合わせて慎重な経過観察が必要です。47歳とお若く、52㎏からの体重減少は1年で5キロ。12か月でおよそ10%。問題となるレベルかどうかが難しいところです。もともと「肥満」ではなかった方の「痩せ」を外来で拝見した場合には発熱やエネルギーの消費量が増大するような疾患がなければ、次にエネルギー摂取不足を来す疾患を考慮して検査を進めてゆきます。大まかに、内分泌疾患、消化器疾患、感染症、心不全、腎不全、神経疾患、非感染性炎症疾患、悪性腫瘍、精神科疾患、アルコール、麻薬や覚醒剤などの薬剤性と幅広い鑑別をあげながら、各専門科と連携し、1か月から6か月程度の間隔で時間をかけて診療させていただくと思います。

しかしながらちょっと気になるのがご質問者様の性別とご年齢です。47歳、女性。もしかして更年期? ホルモンバランスが乱れると自律神経のバランスも乱れて、ただでさえ心身の状態は不安定になりがちです。加えて、家庭や人間関係、老後への不安、親の介護、子どもの教育、仕事など健康面や将来に対しての心配ごとが増えていく。更年期のお年頃は環境的な問題からもストレスを抱えやすい時期です。

一般的には、若い頃は多かった筋肉量も年齢とともに減ってしまい、若い頃と同じような食事を続けてしまい太りやすくなるというわけです。また、女性ホルモン(エストロゲン)も体重の増加に関係しております。排卵や月経に適した身体づくりのほか、脂肪の代謝を促すエストロゲンが、閉経を迎えて分泌量が減り、内臓脂肪がたまりやすくなります。

逆に!質問者様のように更年期になると、痩せてしまう人もいます。その理由は、胃の粘膜や腸の蠕動運動など消化器のはたらきが落ちて、食欲不振になり食事摂取量が低下していることも考えられます。併せて、自律神経のはたらきが乱れてしまうことが影響しているかもしれません。

ところで、肥満と痩せのどちらが健康によいのでしょうか?一般に中年以降の肥満は男女ともに慢性疾患のリスクを上げ、健康寿命の短縮につながることが分かっています。中年以降には肥満を避けて、筋力を保ちながら若いころの体重を維持することが賢明です。そこで健康的な痩せ方のポイントとなる、運動と食生活についてご紹介いたしましょう。

まずは、定期的な運動から!少し息が上がる程度の有酸素運動がお勧めです。ウォーキングでは腕を振りながら歩くと全身運動になり、筋肉にほどよい刺激を与えながら、全身を引き締めることができます。寒い季節や屋外の運動が不安な方は、転倒に気を付けながら踏み台昇降など自宅で行うこともできます。1週に150分程度の運動を目安に、脂肪を燃やしましょう!また、ある研究によると先生に倣いながら運動をすると短期間で効果的に筋力がアップするようです。

食生活において、無理な食事制限は禁物。続けられる範囲でよいので、タンパク質、繊維、ビタミンを豊富に含んだ様々な食材をバランスよく食べましょう!また、食べる順番もダイエットには効果的です。おかずから食べ始めましょう。脂肪や炭水化物を身体が吸収しにくくなり、血糖値の急な上昇を防げます。たとえば、食物繊維が豊富なごぼうやキャベツ、きのこ類をよく噛んで食べたら次に、お肉や魚などの主菜を食べ、最後にご飯やパンなどの主食を食べます。ゆっくりよく噛んで食べると糖質の摂りすぎや吸収を抑えられます。加えて、更年期世代の女性には植物性の女性ホルモン類似物質である大豆イソフラボンの効果も含めて、大豆はお勧めです!食事のコントロールと合わせてイソフラボンを摂取することで効果的なダイエットにつながるかもしれません。

いずれにしても、自分だけで悩みすぎないよう、周囲に理解を求め、専門家に相談できることも覚えておいてくださいね。運動やお食事についてはお近くのトレーナーや栄養士さんなどにご相談されてはいかがでしょう?

私ども啓和会も医療と介護の融合で地域のみなさんの健康な生活をサポートいたします。ぜひご相談ください。(金崇豪)

 

参考文献
◇中澤一弘 やせ 今日の臨床サポート https://clinicalsup.jp
◇Yang Zheng Associations of weight gain from early to middle adulthood with major health outcomes later in life JAMA.2017; 318(3): 255-69.
◇Molly B. Conroy Effectiveness of a physical activity and weight loss intervention for middle aged women: healthy bodies, healthy hearts randomized trial J Gen Intern Med.2014; 30(2): 207-13.
◇更年期・閉経後は痩せる 更年期で痩せる人・太る人とその原因 イソフラボン倶楽部 http://isoflavone.jp/column/

「男性の更年期障害」ってあるんですか?

Q : ストレスのせいかイライラすることが多く、妻や娘とも言い争うことも増えました。「男性の更年期障害」ってあるんですか? (49歳男性)

A:日頃からつのるイライラやつらい思い。でもおれは男、泣きとおすなんてできないよ。でも夜も眠れず寝汗でつらいし、なんだか不安で疲れやすい。外来にこんな方がいらっしゃると、日頃は漢方薬の出番。でも質問者様のおっしゃる通り、ストレスに対する反応に加えて、そのイライラ、男性ホルモンの減少が影響しているかもしれません。

医学上は加齢男性性腺機能低下症候群と呼ばれる、いわゆる「男性の更年期障害」は日本でも十数年前から知られるようになっており、2007年には日本泌尿器科学会、日本Men’s Health医学会公認で診療の手引きが発行され、その診療に際する最初のガイドラインが示されました。40代後半から60代でうつ病やメタボリックシンドローム、高脂血症や脳・心血管病変などのリスクとしても注目されています。

症状としてはのばせ・多汗、全身倦怠感、筋肉や関節の痛み、筋力低下、骨密度低下、頭痛・めまい・耳嶋、頻尿など。併せて、不眠、無気力、イライラ、性欲減退、集中力や記憶力の低下などとともにうつ症状が出る場合もあり、「男性の更年期障害」は、女性更年期障害とよく似た多様な症状が見られます。

週末は夜更かししてテレビを見ながらビールを飲んでお菓子をつまむ。日曜日は一日中横になって過ごしたりしていませんか?予防のためには生活習慣の改善が一番。適度な運動とバランスのとれた食生活が効果的です。筋肉を使うことでテストステロンが増え、ストレス解消にもなります。週150分程度のウォーキングやスロージョギングでメリハリをつけましょう。食事ではニンニク、タマネギなどのネギ類や、ヤマイモなどのネバネバ食品がおすすめです。また、良質な睡眠も大切。生活に張り合いが出るような趣味や生きがいを持ち、ストレスを解消しましょう。

それでも困った時は、当院内科へぜひご相談ください。漢方薬を中心として治療を考えることが出来るかもしれません。専門的な治療には泌尿器科や心療内科・精神科などスペシャリストの先生への紹介も含めて対応させていただきます。
(金崇豪)

 

参考文献
◇井手 久満 男性更年期障害(LOH症候群) 医療法人社団こころとからだの元気プラザhttps://www.genkiplaza.or.jp
◇石内裕人 第30回男性更年期の冷えと漢方治療 Kampo Square https://www.kampo-s.jp
◇岩本 晃明ら 日本人成人男子の総テストステロロン、遊離テストステロンの基準値の設定 日泌尿会誌.,95(6),p751-,2004.

頭痛持ちです。病院に行くタイミングを逃します

Q : 頭痛持ちです。鎮痛剤で治まるので、つい病院に行くタイミングを逃します。(37歳女性)

A : 頭痛は実によくある症状ですよね。頭の一部もしくは全体の痛みや首後ろ、頭の付け根や、眼の奥の痛みも含んで頭痛といいます。
頭痛は大きな分類で2つ、脳出血や骨折による頭痛など全身の病気による頭痛「症候性頭痛」と、頭の中や外そのものに異常のない「機能性頭痛・慢性頭痛」に分かれます。ご相談者様は頭痛持ちとおっしゃられると後者の慢性頭痛でしょうか。
慢性頭痛は、脳の機能障害によって引き起こされ、通常は器質的な異常を残しません。しかし、脳に一時的に何らかの病態が起こり、頭痛のみでなく様々な症候を生ずるものです。そして、自覚症状が主であるため患者さんとのお付き合いが長くなることの多い病気でもあります。
私どもはプライマリケア(かかりつけ医療)の役割として各科に横断的な診療を心がけております。頭痛に関しては、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛、後頭神経痛、薬物による頭痛などの機能性・慢性頭痛の治療に当たりながら、クモ膜下出血や髄膜炎、脳血管障害などの重篤な症候性頭痛の原因となる疾患には地域の総合病院、専門科の先生方と協力して診療にあたっています。
よくある疾患の症状と治療を簡単に紹介いたします。片頭痛は、生活に支障のある頭痛で日常動作により悪化します。悪心、嘔吐を伴い、音、光などの刺激で悪くなる傾向があります。緊張型頭痛は、両側からの圧迫や締め付け感が特徴で、持続時間は長く、ストレスや肩こりで誘発されます。通常は嘔気などは伴うことは少ないです。群発頭痛は、激しい頭痛発作が片側のそこかしこに集中して起こります。持続は15~180分(大部分は1~2時間)と言われます。
これら慢性頭痛の大規模な調査によると日本人成人の8.4%もの方が片頭痛に悩まされており、そのうち日常生活に支障がある方の割合は74%にも上ると言われます。その割に、定期的に医療機関を受診されている方はたったの2.7%に過ぎず、ざっと計算してみると1000万人近くのかたが日常生活に支障があるまま医療機関を受診せずに過ごしていることになります。これは社会の大きな損失につながる可能性のある大変な数字です。
近年は診断も治療薬も進んでおります。当院内科外来では専門医とも相談しながら診療にあたっております。また、通院が困難な状態の方々には川崎市川崎区小田地域を中心に訪問診療も行っております。お困りの方はぜひご相談ください。

参考文献
◇坂井文彦 頭痛の疫学と医療経済学 神経研究の進歩, 2002 p343-
◇五十嵐 久佳 片頭痛慢性化が社会活動に与える影響 臨床神経学 53巻11号 2013 p1225-
◇竹島多賀夫ら 頭痛 今日の臨床サポート 著者最終レビュー2018/10/26
https://clinicalsup.jp/jpoc

身体がダルく、微熱が1週間ほど続いています

Q : 最近、身体がダルい日が多く、微熱が1週間ほど続いています。(63歳女性)

 A : ダルさ=倦怠感・疲労と微熱ですね。診察室へも多くいらっしゃいます。今週はお出かけが続いて日中頑張りすぎたのか、夕方から始まる倦怠感と微熱に悩まされますが、朝になると幾分かよくなっている時にはどうしたらよいのか、いっしょに考えてみましょう。
倦怠感・疲労を訴える成人人口は1割から3割にも登ります。いつから症状があるのか、そして眠気や呼吸困難、筋力低下などほかの症状に有無が重要です。また 微熱は一般的に腋下温37.4℃までの体温上昇を言い、病的な発熱と、病的意義のないものの両方が含まれると言われます。原因や経過についてご本人といっしょに記録して、経過を追いながら考えてゆくことが大切で、時には体温表(熱型表)につけていただくこともあります。
微熱は自然軽快することがあるので、経過観察とすることが多いですが、苦痛が強い場合には、解熱剤を使います。一方で微熱は感染症や膠原病、薬剤熱などが原因のこともあり必要に応じて専門科と相談しながら診療にあたってゆきます。
また、倦怠感・疲労と切っても切れないのが睡眠障害です。眠るときには部屋を暗くしていますか?テレビやラジオ、携帯電話・タブレット等を寝室で使用していませんか?高齢の方は日中に明るい窓際で過ごし、昼と夜のリズムを付けることも重要です。睡眠障害は入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒などに分けられますが、自分にあった睡眠時間の確認や睡眠時の無呼吸の有無も治療方針にかかわってきます。もし、単純な睡眠時間の不足であれば、睡眠時間の確保、かたや時間がない方は日中30分以内の仮眠が効果的です。
6カ月以上継続する疲労は「慢性疲労」と呼ばれ、精神科的な疾患も考慮し専門科への相談も考えながら診療してゆきましょう。
当院内科では主に身体的な疾患については血液検査や画像検査を組み合わせて診断と治療を行ってゆきます。軽度の貧血やビタミン不足から眠気や倦怠感・疲労が見られることもありますので、ご相談者様もご家族様も健康診断からぜひご相談ください。(金崇豪)

参考文献
◇鈴木智晴 徳田安春 疲労・倦怠感 今日の臨床サポートhttps://clinicalsup.jp/jpoc
◇横江正道 野口善令 微熱  今日の臨床サポート
https://clinicalsup.jp/jpoc

最近よくため息が・・・すぐに疲れてしまいます

Q : 最近よくため息がでます。好きだった買い物もすぐに疲れてしまいます。(55歳女性)

A : 女性の50代、子育てもお仕事もひと段落、さぁこれからますます人生が充実してくる年代!とはいえ、どなたでも気分の波はありますよね。まずはお食事、睡眠、運動などご自身の生活の見直しからです!鉄分やビタミン、繊維質、タンパク質など栄養のあるものをしっかり摂りましょう。夜更かしに気を付けて、散歩やジョギング、筋力トレーニングなども時に有効です。しかしながら、楽しめていた趣味が楽しめない、集中力が続かない、食べられない、眠れない、考えられないなどの不調が長く続いて生活に支障をきたすようでは注意が必要です。あまり悩みすぎずに医療機関に相談することも選択肢の一つです。

いわゆる町の診療所、プライマリケア医を受診される方の一部はうつ病圏であるといわれ、その代表的な症状として、1)ほとんど毎日の抑うつ気分、2)興味、喜びの著しい減退、3)著しい体重減少、あるいは体重増加、4)睡眠障害、5)精神運動性の焦燥または制止、6)易疲労性、気力の減退、7)無価値感、不適切な罪責感、8)思考力や集中力の減退、9)自殺念慮、自殺企図――が挙げられます。
鑑別診断としては適応障害、軽躁・躁病などの精神疾患から、更年期障害や甲状腺機能障害などの身体疾患および薬剤や認知症、低活動性せん妄、アルコール誘発性を考慮します。

抑うつ症状をきたす方の中には背景に実社会における様々な不安を抱えている方も多くいらっしゃり、治療方法の判断は難しいことも多くあります。当院では院内外の専門の先生とも連携しながら、安定期の治療継続などに携わっております。質問者様もお気軽にご相談ください。
また、当院の物忘れ外来には、楽しめない、食べられない、眠れないなど訴える方も多く来院されますが、ご高齢の方は薬物療法による副作用が出現しやすいため、抑うつ症状に対して薬剤を使用する際は少量から開始し、ご本人だけでなくご家族とも情報共有しながら経過にあわせて慎重に薬剤の種類や量を調節しています。

参考文献
◇上島国利 尾鷲登志美 うつ病:今日の臨床サポートhttps://clinicalsup.jp
◇木村勝智 プライマリ・ケアにおける「不安」の評価法 総合診療 27巻9号 (2017年9月)
◇谷将之 大坪天平 高齢者のうつ病 (押さえておきたい! 心身医学の臨床の知 44)
– 心身医学, 2012

よくつまづきます。父がパーキンソン病でした

Q : 最近、家の中でよくつまづきます。父がパーキンソン病でしたが、まさか遺伝はしませんよね。(57歳女性)

A:段差も何もないところで転んでしまうこと、ありますよね。私の友人は足の小趾をぶつけることが多く困っています。さて、パーキンソン病とは、振戦(ふるえ)、動作緩慢、筋強剛(筋固縮)、姿勢保持障害(転びやすいこと)の4つを主な運動症状とする病気です。つまづきやすい=転びやすいと解釈してお話を進めていきましょう。
パーキンソン病は50歳-65歳で起こることが多い病気です。40歳以下で起こる場合は、若年性パーキンソン病と呼ばれます。
ほとんどの方では特別な原因はありません。神経細胞の中にαシヌクレインというタンパク質が凝集して溜まることがありますが、食事や職業、住んでいる地域など、原因となる特別な理由はありません。根本的原因は特定されていませんが、病態として大脳の下にある中脳の黒質ドパミン神経細胞が減少することで体が動きにくくなり、ふるえが起こりやすくなります。

質問者様もご心配の点ですが、パーキンソン病の9割以上は遺伝しません。稀に、若年性の一部で家族内に同じ病気の方がおられ、遺伝子が確認されると家族性パーキンソニズムと言われます。最近は,孤発性か家族性かを問わず、遺伝子の異常,あるいは遺伝子と環境因子の相互作用でおこる疾患であると考えられるようになり、治療法の開発研究も神経変性機構への介入実験を通じて進められているのが現状です。

症状には運動症状と非運動症状があり、運動症状として初発症状はふるえ(振戦)が最も多く、次に動作の緩慢さ、痛みなどがありますが、姿勢保持障害やすくみ足、筋強剛で発症することはないようです。ふるえは安静時の振戦で、動かすとふるえは小さくなります。動作緩慢は動きが遅くなり細かい動作がしにくくなることです。最初の一歩が踏み出しにくくなる「すくみ」が起こることもあります。姿勢保持障害はバランスが悪くなり転倒しやすくなることです。姿勢保持障害は病気が始まって数年してから起こります。筋強剛は他人が手や足、頭部を動かすと感じる抵抗を指しています。運動症状のほかには、便秘や頻尿、発汗、易疲労性(疲れやすいこと)、嗅覚の低下、起立性低血圧(立ちくらみ)などの自律神経障害や、気分が晴れない(うつ)、興味が薄れたり意欲が低下する(アパシー)、認知機能障害、睡眠障害などの多彩な非運動症状も見られ、パーキンソン複合病態として認識されることもあります。

治療の基本は薬物療法です。ドパミン神経細胞が減少するため少なくなったドパミンを補うためにドパミンの材料であるL-ドパやL-ドパの作用を強める代謝酵素阻害薬、それらの合剤を服用します。また、ドパミン神経以外の作用薬に、アセチルコリン受容体に作用する抗コリン薬、グルタミン酸受容体に作用するアマンタジン、アデノシン受容体に作用するイストラデフィリン、シグマ受容体に作用するゾニサミドがあります。さらに、難治例には手術療法は脳内に電極を入れて視床下核を刺激する方法も行われます。
日々の中で気を付けることができるのは運動です。体を動かすことは体力を高め、パーキンソン病の治療になります。激しい運動ではなく、散歩やストレッチなど、毎日運動を続け体力を高めることは重要です。また、気持ちを明るく保つことも重要です。気分が落ち込むと姿勢も前かがみとなり、動作も遅くなります。私たちが意欲を持って行動する時は脳内でドパミン神経が働いていると考えられています。日常生活の過ごし方も大事な治療ですので、ぜひ工夫してください。
パーキンソン病の中にまれに遺伝が関係するものもあるようです。気にかかる症状があれば遠慮なくご相談ください。当診療所内科では専門科の先生と連携して診療にあたっております。(金崇豪)

参考文献
◇葛原 茂樹 パーキンソン病治療の現状と展望 臨床神経,48:835-843, 2008
◇変性疾患部門(家族性パーキンソン病)順天堂大学医学部付属順天堂医院ホームページhttp://www.juntendo-neurology.com/n-hensei2.html 2018年9月7日アクセス
◇パーキンソン病 難病情報センターホームページ http://www.nanbyou.or.jp/entry/169 2018年9月7日アクセス