胃のむかつきが続いていて、食事の量が落ちています

Q : 胃のむかつきが続いていて、食事の量が落ちています。(56歳女性)
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A : おなかの不快感や毎日の食事の量がいつもと違う。そんな状態が続くと不安になってしまいますよね。そのお気持ちよくわかります。

胃のむかつきや食欲の低下には、いくつかの原因が考えられます。たとえば、ストレスや疲れで胃の動きが鈍くなっていることがあります。人は緊張や不安を感じると、自律神経が乱れ、胃がきちんと働かなくなることがあります。これは特に真面目で頑張りすぎてしまう人に多く見られる傾向です。
また、年齢とともに胃の粘膜が弱くなったり、消化機能が落ちたりすることも関係しているかもしれません。体は自然と変化していくので、昔と同じように食べられないことがあっても不思議ではありません。
中には、慢性的な胃炎や胃潰瘍、逆流性食道炎などの病気が関係している場合もあります。特に、黒っぽい便が出たり、体重が急に減ったり、立ちくらみや息切れがある場合は、貧血や内臓からの出血が関係していることもあるので、一度医療機関での検査をおすすめします。
一方で、薬の影響も見逃せません。市販の痛み止めや風邪薬、貧血の薬などは、胃に負担をかけることがあります。こうした薬を飲んでいる場合は、主治医や薬剤師に相談して、胃にやさしい飲み方や別の薬に変えてもらう方法を考えてもいいかもしれません。
日々の生活では、無理をせずに少しずつ食べられるものを探してみてください。おかゆやスープ、ヨーグルトなど、消化にやさしいものから始めてみるのもひとつの方法です。食べることがつらいときは、無理に量を取ろうとせず、こまめに少量ずつ摂るのがよいでしょう。
最後に、体の不調は気のせいだけではなく、体が何かを伝えようとしているサインであることも少なくありません。気になる症状が続くときは、ひとりで悩まず、早めに相談していただけると私たちも安心です。
啓和会は介護と医療の融合で地域の皆さんの困ったにこれからもお答えしてゆきます。ご相談ありがとうございました。

参考)
厚生労働省 e-ヘルスネット「胃の働きとストレス」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-003.html(2024年)

日本消化器病学会ガイドライン「機能性ディスペプシア診療ガイドライン」
https://www.jsge.or.jp/guideline/disease(2021年)

日本消化器病学会「NSAIDs関連消化性潰瘍の対策」
https://www.jsge.or.jp/citizen/nsaids(2020年)

国立健康・栄養研究所「高齢者の消化機能と食事」
https://www.nibiohn.go.jp/eiken/info/kourei.html(2023年)

朝起きると腰が痛くて、動き始めるまで時間がかかります

Q : 朝起きると腰が痛くて、動き始めるまで時間がかかります。(52歳男性)
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A:朝の「腰の痛み」、その原因と対策についてお話します。
朝起きたとき、「腰が痛くてすぐに動けない」「しばらくしてやっと動けるようになる」——そんなふうに感じる人は、あなただけではありません。実は、年齢を重ねるとよくある体のサインです。人の体は、夜眠っている間にずっと同じ姿勢になりがちです。長い間じっとしていると、関節や筋肉が少しかたくなってしまうんですね。ちょうど、冬の朝に冷えた自転車のチェーンが動きにくくなるのと似ています。こうした朝の腰の痛みには、いくつかの原因が考えられます。
加齢による変化:年を重ねると、背骨や腰まわりの関節がすり減ってかたくなりやすくなります。
筋肉や筋膜のこわばり:筋肉を包んでいるうすい膜(筋膜)がかたくなることで、動き始めに痛みが出ることも。
まれに、軽いヘルニアや関節の病気が関係していることもありますが、ほとんどは深刻なものではありません。

では、どうやって対策すればいいのでしょうか?まずは、原因をはっきりさせること。一度、整形外科を受診して、レントゲンや必要があればMRIなどの検査を受けてみましょう。原因がわかれば、適切な対処ができます。
朝のストレッチを取り入れてみましょう
朝、起きる前にベッドの上で軽くストレッチをするのがおすすめです。たとえば、仰向けで寝たまま、両ひざをゆっくり抱えてみると、腰が少しずつやわらかくなります。
日中も体を動かす習慣をつけましょう
最近の研究では、「腰痛の多くははっきりした原因がなくても、体を動かすことでよくなる」ことがわかっています。ウォーキングや簡単な筋トレなど、できる範囲で体を動かす習慣をつけましょう。
温めて血流をよくしたり、薬を使ったりすることも効果的
痛みが強いときは、湿布や痛み止め、カイロなどで腰を温めるのも効果があります。無理せず、自分に合った方法でケアしていきましょう。
同じ姿勢を続けないことも大事
デスクワークやテレビを見る時間が長くなると、腰に負担がかかります。30分に1回は立ち上がって、体を軽く動かすように意識してみてくださいね。

腰痛は多くの人が経験する身近な症状です。でも、毎日のちょっとした工夫と習慣で、きっと楽になりますよ。焦らず、やさしく体とつき合っていきましょう。啓和会では医療と介護の融合で地域のみなさんの健康と福祉のサービスを提供します。整形外科外来では曜日によって膝や腰、手や肩の専門医が診療にあたっています。理学療法も充実しておりますので困ったことがあれば地域の皆様はぜひご相談ください。

参考)
日本医科大学医学会雑誌
腰痛診療ガイドライン2019の要旨と解説
81_123.pdf
世界保健機関
WHO guideline for non-surgical management of chronic primary low back pain in adults in primary and community care settings

糖尿病、遺伝する率は高いのでしょうか?

Q : 亡くなった父が糖尿病だったのですが、遺伝する率は高いのでしょうか?最近は砂糖を控えたり、ご飯の量を減らしたりしています。(46歳男性)

A : 気になりますよね、生活習慣病。46歳ですと働き盛り、食べ盛り(?)でおなかが気になる今日この頃でしょうか。実は、一口に糖尿病といっても1型糖尿病と2型糖尿病は原因の異なる病気です。生きるために絶対に必要なインスリン(ホルモン)が何らかの原因で分泌できなくなった1型糖尿病と、肥満・加齢・運動不足などによって少しずつ分泌不足、作用低下になる2型糖尿病とがあります。
病気の原因については、1型・2型のいずれも発病の背景となる遺伝子異常に加えて、発病の引き金になる環境(生活習慣など)があると言われます。1型と比べて2型糖尿病は遺伝リスクが大きいこともわかっています。
遺伝するのは糖尿病そのものではなく 「糖尿病になりやすい体質」です。この体質を持った人に、食べ過ぎ、運動不足、肥満、加齢、ストレス、感染症などさまざまな環境因子が加わってはじめて糖尿病が発症すると考えられます。2型糖尿病の原因となる遺伝子異常は何種類かの軽い異常が多数積み重なることによってその体質を形成している「複合遺伝」といわれており、糖尿病の遺伝的素因は複雑だと言われています。また、2型糖尿病を含め、成人病には遺伝的素因の他に、食習慣、運動不足、肥満、ストレス、酒・たばこなどの嗜好といった環境的要因が大きく影響します。
民族で比べると、幸運なことにアジア人は欧米の白人と比べる1型糖尿病のリスクは低いのですが、残念なことに2型糖尿病では肥満が軽度なのに糖尿病になる例が多いと言われます。
さて、糖尿病の合併症の多くが腎症、網膜症など比較的小さな血管の障害が中心であり、糖尿病は実は血管の病気であるとさえいわれます。また、糖尿病と並ぶ生活習慣病の一つ、高脂血症などによる動脈硬化は心筋梗塞、脳梗塞などの原因となり大血管の障害も見逃せません。下肢への血行が原因で歩行障害や下肢の切断にもつながることがあります。
「糖尿病は治らない」 とよく言われますが、これは真実です。しかしながら合併症が出ないように管理しながら上手に付き合えば糖尿病に負けずに生きてゆくことは可能です。
糖尿病に負けない最善の手段は、言うまでもなく発症を未然に防ぐことです。そのためには定期検診を受けましょう。 検診で糖尿病そのものが発見される場合や、糖尿病になりやすい体質を指摘される場合もあります。 肥満、食べ過ぎ、運動不足、お酒の飲み過ぎといった危険なライフスタイルについて注意を受けることもあるかも知れませんが、それを機会と捉えて生活習慣の改善につなげましょう!!
糖尿病は家族歴がなくても安心してはいけません。特にアジア人は高リスクの民族です。ぜひご相談ください、内科外来でお待ちしております。(金崇豪)