Q : 亡くなった父が糖尿病だったのですが、遺伝する率は高いのでしょうか?最近は砂糖を控えたり、ご飯の量を減らしたりしています。(46歳男性)
A : 気になりますよね、生活習慣病。46歳ですと働き盛り、食べ盛り(?)でおなかが気になる今日この頃でしょうか。実は、一口に糖尿病といっても1型糖尿病と2型糖尿病は原因の異なる病気です。生きるために絶対に必要なインスリン(ホルモン)が何らかの原因で分泌できなくなった1型糖尿病と、肥満・加齢・運動不足などによって少しずつ分泌不足、作用低下になる2型糖尿病とがあります。
病気の原因については、1型・2型のいずれも発病の背景となる遺伝子異常に加えて、発病の引き金になる環境(生活習慣など)があると言われます。1型と比べて2型糖尿病は遺伝リスクが大きいこともわかっています。
遺伝するのは糖尿病そのものではなく 「糖尿病になりやすい体質」です。この体質を持った人に、食べ過ぎ、運動不足、肥満、加齢、ストレス、感染症などさまざまな環境因子が加わってはじめて糖尿病が発症すると考えられます。2型糖尿病の原因となる遺伝子異常は何種類かの軽い異常が多数積み重なることによってその体質を形成している「複合遺伝」といわれており、糖尿病の遺伝的素因は複雑だと言われています。また、2型糖尿病を含め、成人病には遺伝的素因の他に、食習慣、運動不足、肥満、ストレス、酒・たばこなどの嗜好といった環境的要因が大きく影響します。
民族で比べると、幸運なことにアジア人は欧米の白人と比べる1型糖尿病のリスクは低いのですが、残念なことに2型糖尿病では肥満が軽度なのに糖尿病になる例が多いと言われます。
さて、糖尿病の合併症の多くが腎症、網膜症など比較的小さな血管の障害が中心であり、糖尿病は実は血管の病気であるとさえいわれます。また、糖尿病と並ぶ生活習慣病の一つ、高脂血症などによる動脈硬化は心筋梗塞、脳梗塞などの原因となり大血管の障害も見逃せません。下肢への血行が原因で歩行障害や下肢の切断にもつながることがあります。
「糖尿病は治らない」 とよく言われますが、これは真実です。しかしながら合併症が出ないように管理しながら上手に付き合えば糖尿病に負けずに生きてゆくことは可能です。
糖尿病に負けない最善の手段は、言うまでもなく発症を未然に防ぐことです。そのためには定期検診を受けましょう。 検診で糖尿病そのものが発見される場合や、糖尿病になりやすい体質を指摘される場合もあります。 肥満、食べ過ぎ、運動不足、お酒の飲み過ぎといった危険なライフスタイルについて注意を受けることもあるかも知れませんが、それを機会と捉えて生活習慣の改善につなげましょう!!
糖尿病は家族歴がなくても安心してはいけません。特にアジア人は高リスクの民族です。ぜひご相談ください、内科外来でお待ちしております。(金崇豪)