夜中に何度もトイレに行きたくなり、熟睡できません

Q : 夜中に何度もトイレに行きたくなり、熟睡できません。(61歳女性)
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A: 「何度もトイレに起きて、夜ぐっすり眠れないんです」――そんな夜の悩みを抱える方は少なくありません。男女を問わず60歳を過ぎると、加齢やホルモンバランスの変化とともに夜間頻尿の頻度が高くなります。これは年齢とともにホルモンのバランスが変わるからです。
夜ぐっすり眠れないと、昼間にぼーっとしたり、疲れやすくなったり、転んでケガをするリスクも高まります。でも「年のせいだから仕方ない」とあきらめないでください。夜中に何度もトイレに行く「夜間頻尿」は、生活の工夫や治療で改善できる病気です。

夜間頻尿(やかんひんにょう)とは、「夜に1回以上、トイレに行くために目が覚めること」です。特に高齢の女性では、3人に2人が夜に2回以上トイレに行くと言われています。主な原因としては、まず加齢やホルモンの変化が挙げられます。夜は本来、体が尿を作る量を減らしてくれるホルモン(バソプレシン)が出ますが、年をとるとこのホルモンが減って、夜にもたくさん尿が作られるようになります。次に過活動膀胱(OAB)があります。これはトイレが近くなったり、急に尿がしたくなる状態で、骨盤の筋肉が弱ったり、ストレスがきっかけになることもあります。また、糖尿病や心臓の病気などの影響で尿の量が増える場合もありますし、眠りが浅いことで、少しの尿意でも目が覚めやすくなることも原因です。

泌尿器科といった専門のお医者さんでは、こうした原因を調べるために、トイレに行った回数や時間を書いた「排尿日記」をつけたり、尿や血液の検査を行ったり、必要に応じて超音波検査をすることもあります。治療は原因によって異なります。過活動膀胱の場合には、膀胱を落ち着かせるお薬が使われます。夜にたくさん尿が出る場合には、夕方に軽い利尿剤を使ったり、バソプレシンの薬(デスモプレシン)を使うことがあります。ただし、この薬は副作用もあるため、医師の指導が大切です。さらに、骨盤底筋のトレーニングや、膀胱の訓練も効果があるとされています。

日常生活でもできる工夫はいくつかあります。たとえば、夜は水分のとりすぎに注意することです。特にカフェインやお酒は控えましょう。足のむくみがある人は、昼間に足を上げて過ごすことで、夜の尿量が減ることがあります。そして、スマホやテレビを寝る前に見すぎないことも大切です。ぐっすり眠るための環境づくりが大事になります。また、夜トイレに行くことが不安で眠れなくなるという「心の問題」もあるため、眠れない悩みやストレスについても相談することが大切です。

夜間頻尿は「年のせい」と片づけられがちですが、実はちゃんと治療が必要な体のサインです。病院で調べてもらい、生活を少し変えるだけでも夜ぐっすり眠れるようになるかもしれません。ひとりで悩まずに、ぜひ医師に相談してみてください。健康と安心を取り戻す第一歩になります。
啓和会では介護と医療の融合で、介護サービスの施設、訪問看護ステーション、総合病院や専門医療機関と連携しながら地域のみなさんと向き合い暮らしの力を引き出すお手伝いをさせていただきます。困った時はぜひ相談にいらしてくださいね。

参考)
夜間頻尿診療ガイドライン 日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会